2021年9月FOMCレビュー~市場との対話に成功 (※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●政策意図を示す基本手段であるFOMC声明で、テーパリングの開始が近いことが正式に示された。

●ドットチャートが示唆する0.25%の利上げ回数は2022年が0.5回、2023年と2024年は3回に。

●今回FOMCはタカ派的な部分もあったがパウエル議長の市場との対話が奏功し混乱は回避された。

政策意図を示す基本手段であるFOMC声明で、テーパリングの開始が近いことが正式に示された

米連邦準備制度理事会(FRB)は、9月21日、22日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、市場の予想通り、ゼロ金利政策および量的緩和の維持を決定しました。今回は、量的緩和の縮小(テーパリング)について、開始時期に関する具体的な手掛かりの有無や、FOMCメンバーが適切と考える「政策金利水準の分布図(ドットチャート)」などが市場の焦点でした。以下、どのような情報が提示されたかを検証します。

 

まず、FOMC声明では、「経済の改善がおおむね予想通りに進めば、資産購入のペースを早急に緩和する必要があると判断する」との文言が新たに追記されました。これにより、経済状況次第で、早ければ次回のFOMC(11月2日、3日開催)で、テーパリングの開始が決定される可能性が高まりました。FOMC声明は、政策意図を示す基本手段であるため、テーパリング開始が近いことが、正式に示されたことになります。

ドットチャートが示唆する0.25%の利上げ回数は2022年が0.5回、2023年と2024年は3回に

次にドットチャートについて、ドットの中央値が示唆する通年の利上げ(0.25%)回数は、前回(6月16日)、2022年は0回、2023年は2回でした。これに対し、今回、2022年は0.5回、2023年は3回となり、新たに示された2024年分の予想では3回という結果になりました(図表1)。各年の利上げ回数を見る限り、今回のドットチャートはタカ派的と解釈できます。

 

(注)ドットの中央値が示唆する通年の利上げ(0.25%)回数。2024年は今回が初めて。 (出所)FRBの資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]ドットチャートが示唆する利上げ回数 (注)ドットの中央値が示唆する通年の利上げ(0.25%)回数。2024年は今回が初めて。
(出所)FRBの資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

FOMCメンバーによる経済見通しでは、物価上昇率(第4四半期における前年同期比の伸び率)について、2021年と2022年の予想中央値が上方修正されました。今回、新たに2024年分の予想中央値も示されましたが、2021年から2024年まで、すべて長期均衡水準を上回っています(図表2)。これらを踏まえると、ドットチャートのタカ派方向の変化は、合理的と思われます。

 

(注)経済見通しは今回(9月22日)発表分。単位は%。カッコ内は前回(6月16日)の見通し。 2024年は今回が初めて。実質GDP成長率は10-12月期の前年同期比、物価上昇率は個 人消費支出(PCE)ベースで10-12月期の前年同期比、失業率は10-12月期平均。 (出所)FRBの資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]FOMCメンバーの経済見通(注)経済見通しは今回(9月22日)発表分。単位は%。カッコ内は前回(6月16日)の見通し。2024年は今回が初めて。実質GDP成長率は10-12月期の前年同期比、物価上昇率は個人消費支出(PCE)ベースで10-12月期の前年同期比、失業率は10-12月期平均。
(出所)FRBの資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

今回FOMCはタカ派的な部分もあったがパウエル議長の市場との対話が奏功し混乱は回避された

そして、パウエル議長は記者会見で、景気回復が軌道に乗る限り、来年の中ごろに終える緩やかなテーパリングが適切というFOMCメンバーの見方に言及しました。また、メンバーの半数は、望ましい経済環境が2022年末までに実現すると考えていることも明らかにしました。望ましい経済環境とは、利上げ可能な環境のことであり、パウエル議長はドットチャートのタカ派方向の変化について、その理由を説明したものと思われます。

 

以上より、今回のFOMCは、タカ派的な部分も目立ちましたが、FOMC後の市場は総じて落ち着いた動きとなっています。これは、パウエル議長がこれまで、テーパリングについて市場との対話を慎重に続けてきたことによるところが大きいとみています。また、記者会見で、テーパリングは利上げ時期に直接的な示唆を与えるものではないと明言したことも、市場の安心感につながったと推測されます。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年9月FOMCレビュー~市場との対話に成功』を参照)。

 

(2021年9月27日)

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 チーフマーケットストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介

投資情報グループは、運用や調査経験豊富なプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの情報発信を行っています。幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、年間で約800本の金融市場・経済レポートの発行の他、YouTube等の動画、Twitterでの情報発信を行っています。

著者紹介

連載【市川雅浩・チーフマーケットストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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