対応が悪ければケアマネもやる気を失う
■ケアマネがより親身になる利用者・介護者とは
ケアマネは「人が好くて有能」「人は好いが能力に欠ける」「人間性に問題はあるが有能」「人の好さにも能力にも欠ける」の4つに分類されると本連載のなかで述べました。そして、どのタイプが担当になるかは運しだいだ、とも。
となると「人が好くて有能」なケアマネに当たればいいけれど、ほかの3タイプが担当になると、より良い介護支援は期待できないということになってしまいますが、そんなことはありません。
利用者・介護者側の対応しだいでは、「人は好いが能力に欠ける」「人間性に問題はあるが有能」の2タイプも、欠点が薄らいで期待どおりの仕事をしてくれる可能性はありますし、「人の好さにも能力にも欠ける」タイプにしても、やる気を引き出し、許容できるレベルの仕事をしてもらうことができるのです。
逆にいえば、利用者・介護者の対応が悪ければ、良いケアマネもやる気を失い、ダメなケアマネにしてしまうことがあり得るのです。ケアマネは公正中立が原則ですが、担当する30人前後の利用者を平等に目配りすることは難しい。利用者によって注ぐ熱量に差が出るのです。
だったら、対応に気を使い、熱量を高くしてもらったほうがいい。「あの利用者さんとご家族は感じがいいから放っておけない。頑張ってサポートしよう」と思われることが有利に働くのです。
つぎに、その前提条件として、ケアマネが利用者・介護者に好感度を下げるマイナス要因、つまり利用者・介護者が避けたい対応について、ベテランケアマネのコメントを交えて見ていきます。要因は、大きく4つに分けられるでしょう。次から順に説明していきます。
■ケアマネのやる気をそぐ要因①…自宅の環境
ケアマネは介護が始まるとき、モニタリングや利用者の心身の状態が気になるときなどに、自宅を訪問することになります。じつは、利用者・介護者には、それを快く思わない人が少なくないといいます。他人を自宅に入れることに抵抗感があるからです。
くわえて、家庭の内情も含めた立ち入った話に他人が踏みこんでくるわけですから、歓迎できない意識が生まれます。
いっぽう、ケアマネもそういう意識が強い家を訪問するときは緊張感があるといいます。意を決して行くという感じです。長いつき合いになれば、それも薄れていきますが、当初はピリピリした空気が漂うわけです。
「他人に立ち入ってほしくないという気持ちはわかるんです。でも、利用者さんとご家族がケアマネや介護サービスの支援を必要としているわけで、歓迎してくれとまではいいませんが、ごくふつうに迎え入れてくれてもいいのではないかとは思いますね」
来訪に抵抗感を示す利用者・介護者が多いということは、笑顔で迎えるだけでケアマネの印象が良くなるということでもあります。
つぎに家のなかのゴミの問題。部屋が片づいていないというだけでなく、ゴミが山積みになっている利用者宅もかなりあるそうです。
「利用者さんは日常生活に支障をきたしている状態ですし、ご家族も忙しくて部屋の片づけなどに手がまわらない方が多い。ゴミの回収日に出しに行けない、あるいは利用者さんに認知症の症状があって、ゴミの回収日を間違えるケースもあります。
近所の人も、そんな間違いにやさしく対応してくれればいいんですが、なかには怒る人もいる。それが怖くてゴミを出しに行けなくなる方もいるんです。だから、利用者さんの部屋にゴミがたまっているのは想定内。ゴミを嫌がっていてはケアマネは務まらないんです。
それに、ゴミの問題も支援のひとつになります。ホームヘルパーの生活援助にゴミ出しを組みこめばいいんですから。部屋が片づいていなかったり、ゴミがたまっていること自体、そう気にされなくてもいいです。ただ、それも程度問題で、ゴミで足の踏み場もない状態の家にはケアマネも訪問を避けたくなります。
また、テレビで報道されるゴミ屋敷の住人のようにゴミに執着して、絶対に捨てようとしない人もまれにいます。そういうケースは困難事例として扱われ、ケアマネから担当を拒絶されることがあります」
居室にゴミがある程度なら許容範囲。しかし、度が過ぎるとケアマネも耐えられなくなるということです。それを考えると、ゴミがなく片づいているだけでケアマネが受ける印象は良くなります。
また、介護者が「今日はケアマネさんがくるから、きれいにしておこう」と片づけた形跡が見られるだけでも好感度は上がるということです。