親に対する愛情が感じられない介護放棄者も
■ケアマネのやる気をそぐ要因②…コミュニケーション
ケアマネは利用者・介護者に話すことがたくさんあります。介護保険のシステムやケアプランの説明をする必要がありますし、今後、介護を進めるにあたって意思の疎通を図っておかなければなりません。
しかし、もともとコミュニケーションが苦手なのか、説明に相づちを打つこともなく、ハイ、イイエの返事もなく、聞いているかどうかもわからない反応の人がいるそうです。
また、介護の主体となるのは家族である介護者であって、ケアマネはサポートする役割。その立場上、介護者として日々やってほしいことや心がけてもらいたいことを伝えるわけですが、忘れてしまって、やってくれない人が多いといいます。
ケアマネにとっては利用者・介護者とコミュニケーションをとるのがもっとも重要な仕事といえます。それが成立しなければ仕事にならないわけで、その家のケアに対するモチベーションも下がってしまうのです。
それとは対照的に、根っからの話し好きで、延々と話しつづける人がいるそうです。それも肝心のケアのことはそっちのけで、多くは世間話。ケアマネとしてはつぎの予定が入っていて早く切り上げたいのですが、なかなか解放してくれず困ることが多いといいます。
過剰なもてなしもケアマネを困惑させます。介護の支援という仕事で来ているのですから、もてなしは必要ないのです。しかし、来てくれた以上、もてなさなければならないと思い込んでいる介護者(とくに女性)はけっこういて、そのなかには過剰なもてなしをする人がいるといいます。
「お母さんを介護されている60代の娘さんなんですが、ケアの打ち合わせをしているとき、席を立った。で、10分ぐらいしたら現れて、『ラーメンをつくったので食べてください』というんです。昼食は済ませていたんですが、断るのは失礼かなと思って食べました。でも、それならそれで、話をしているときに『お腹は空いてませんか?』とか『お昼は済ませましたか?』と聞いていただきたいですよね。聞いてくれればお断りできますし。また、その10分間は話を進めたほうが、私にとってもその方にとってもいいわけですよ」
このエピソードは特殊な例ですが、「友達からおみやげでいただいたから」といってお菓子などをケアマネにもたせる人は少なくないそうです。ケアマネは介護者との人間関係を大事にしますからむげには断りませんが、過剰なもてなしはむしろ迷惑。もてなしはなくてかまわないし、するにしても儀礼的にお茶を出すぐらいで十分なのです。
■ケアマネのやる気をそぐ要因③…介護への姿勢
介護に対して前向きな姿勢で臨んでいるかどうかも、ケアマネのやる気を左右します。
「介護者のなかには、ケアマネと会おうとしない人がいます。その場合は、利用者さんと話をすることになりますが、なかには寝たきりかそれに近い状態で、認知症の症状が出ている方もいる。そういう方と話をしても、より良い方向性を見いだすのは難しいわけです。それで利用者さんに『介護者はどうしているのか』を聞くと、同居していることもある。ケアマネとは会いたくないようで、閉じこもって出てこないのです。
また、仕事を理由に会おうとしない人もいます。平日は仕事があって会うのが無理なら、我々は休日でも対応しますし、介護にかんする大事な話をするときは、仕事を休んでも会うべきじゃないですか。でも、それさえ拒ばむ。介護を放棄しているのです」
そのような介護者には、親に対する情が感じられません。ケアマネは利用者の日常生活の課題解決だけでなく、自立を支援するために力を尽くしますが、それは情がある介護者とともに行なわなければ成り立つものではないのです。
しかし、介護を放棄しているということは、その思いがゼロ。「親の心身の状態が悪くなってもかまわない」と思っているし、極端にいえば「早く死んでほしい」という態度なのです。ケアマネとしては、そんな状況に置かれた利用者が気の毒ですから、できるだけのことはしますが、介護者がこの態度ではやる気が起こるわけがありません。
ここまで極端ではありませんが、自立支援型のケアを断る介護者も同様の傾向があります。自立支援型ケアとは、リハビリなどの要介護者の状態を少しでも良くするためのサービス。それを断るというのは、状態が改善されなくてもかまわないということなのです。