利用者・介護者の働きかけでケアマネの心を動かすには
■「介護に前向きな姿勢」がケアマネの心を動かす
「まず、リスペクトをもって接することが基本だと思います。長い実務経験があり、高いハードルを越えてやっとなれる専門職。初対面では人間性まではわかりませんが、ケアマネという仕事に就いていること自体、リスペクトに値するのです。
それに利用者・介護者の多くはケアマネがどういう役割をする人物かさえ理解しないまま接している。そんななか、リスペクトの姿勢が感じられれば悪い気はしませんよね。気持ちをくみ取って仕事をしようという思いが生まれるわけです」
ケアマネの存在を知ろうとする人が少ないのと同様、大半の利用者・介護者は受け身です。介護の知識がないのですから、それも仕方がありませんが、ケアマネのいうことにただ従っているだけ。しかしそれでは、ケアマネが「少し上から目線」という関係性は変わりません。
わからないことがあれば質問をする、それに対するアドバイスがあれば素直に聞く、というように、利用者サイドから積極的にコミュニケーションをとることで、目線の位置を近づけることができるのです。
「それと、ケアマネに前向きな目標を語っておくのもいいと思います。たとえば、お母さんを娘さんが介護しているとします。で、ケアマネにはこんな話をする。『昔、家族で旅行に行った思い出の場所があって、母がそこへもう一度行ってみたいというんです。いまは歩くのもおぼつかないので無理ですが、サービスを受けて体が良くなったら、一緒に行こうねと話しているんです』と。こういう話を聞くとケアマネは心を動かされるんです。まず職業意識。ケアマネのベースにあるのは自立支援、つまり利用者の心身の状態を良くすることですから、娘さんが語る目標と合致するわけです。
また、具体的な目標が示されることで、それを達成するためにケアプランにどのようなサービスを盛りこみ、どんなプロセスで回復させていくか知恵を絞しぼることになる。ケアマネの腕の見せどころであって、モチベーションが上がるわけです。くわえて気持ちも刺激されます。ケアマネを志こころざす人はもともと『人のために役に立ちたい』という思いをもっています。
長い年月をかけて努力してなっているのだから、その思いは強い。それでも利用者が満足できるサービスが提供できないケアマネがいるのは、仕事に追われて余裕がなくなっていることが多分にあります。でも、この娘さんのような目標を聞かされると、原点にある思いがよみがえって、俄然やる気が出るわけです」
ケアマネのこうしたコメントを聞くと、ダメなケアマネを生んでいるのは利用者・介護者のような気がしてきます。
ケアマネには利用者の心身の状態を回復させようという前向きな思いがあるのに、大半の介護者は、利用者が死を迎えるまでの経過期間をいかに苦労を少なく過ごせるかという後ろ向きの理由しかない。これではケアマネのやる気が低下するのも無理はありません。
こう考えると、ダメなケアマネを良いケアマネに変える方法が見つかります。介護は自立支援だという意識をもち、老親を回復させる目標をもって前向きの姿勢で取り組むことです。
それにはケアマネをリスペクトし、積極的にコミュニケーションをとることも必要。そうすることで「少し上から目線」のケアマネが同じ目線のところまで下りてきて、的を射た支援をしてくれるようになるのです。