(※画像はイメージです/PIXTA)

4度目の緊急事態宣言の延長が決まり、自粛生活が続いています。ワクチンの摂取率も高まり、飲食店での酒類の提供以外の社会生活は、一定の制限のもとで変わらず行われるようになってきました。今回は、世田谷用賀法律事務所の代表者、弁護士の水谷江利氏が、コロナ禍におけるイベントの中止、スポーツジムの退会による「費用の払い戻し」について解説していきます。

イベントか開催中止になった場合、払い戻しはされる?

講演、舞台などのイベントは、開催中止になるものもあれば、感染予防対策を万全にして、予定どおり行われるものもあります。では、イベントがコロナを理由に開催不可となった場合、払い込んだチケット代は返ってくるのでしょうか。

 

オリンピックは無観客試合となったため、チケットは払い戻しを受けられることとなっていました。

 

イベント契約は、イベントを見る機会を提供するという義務と、その対価を支払うという義務とで、双方が義務を負う契約ですから、この一方の義務の提供が「不可能」になってなくなれば(法律的にいうと、後発的に履行不能になれば)、支払うべき義務もまた「消滅」してなくなります(民法536条1項にその旨の定めがあります)。

 

金銭を支払う必要はなくなりますから、返金の対象となるということです。

 

ただし、コロナ禍のなかで契約により、一切返金不可と定めておくこと自体は、理論的には可能です。ただし、こういった定めを置いても、その契約が一般消費者を相手にしたものであるときは、消費者に不利な規定として消費者契約法上無効となったり、相手方の権利を制限する不当条項として、民法上無効になったりする場合があるものと思われます。

「コロナ」でスポーツジム退会…会費は返金されるのか

コロナを理由にジムへ一度も行かなかった期間中の会費は、返金されるでしょうか。これは、二つの場合に分けて考える必要があります。

 

初回の緊急事態宣言時のように、政府の指示でジム自体が閉鎖している場合。ジムの会員契約は、ジムから施設を利用する機会を提供しこれを利用する権利を買う双務契約ですから、ジム閉鎖で利用ができない(一方債務が履行不能で消滅)したら代金債務もまた消滅します。すなわち、お金は返ってきます。

 

これに対して、感染懸念から、自ら行くのをやめた場合。感染対策を施しながら通常営業するジムが増えており、実際に通う方もありますから、このような「withコロナ」の風潮のもとでは、「履行不能」と評価するのは難しいでしょう。

 

したがって、通常通りの退会規定(1ヵ月前通告、会費発生など)にしたがった料金徴収になる可能性が高くなります。

 

この点、エステ、美容医療、語学教室、学習塾、パソコン教室、結婚相談所については、特定商取引法が適用されるので、解約による違約金が2万円/5万円又は契約残額の10~20パーセントのいずれか低い額というレベルに違約金が制限されているのですが、ジムは現在この類型に入りません。

 

ですから、キャンペーン期間中の入会による一定期間の解約の制限/一括納付による会費減免などがあった場合には、基本的にはジム側の規約が適用され、これによって返金有無が決まることになります。

 

その返金される金額が、利用もしていないのにあまりにも低すぎる、といった場合には、消費者契約法10条により消費者の利益を一方的に害するので無効になるのではないか、ということが問題となりますが、近年、ジムについては不当条項ではないかと争われた事例も多く、ある程度合理性のある規定を置いているジムも多いようです。

 

 

水谷江利

世田谷用賀法律事務所弁護士

 

 

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    本連載は、「世田谷用賀法律事務所」掲載の記事を転載・再編集したものです。

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