積極的接種の中止の影で「大量のワクチン」を廃棄
子宮頸がんの原因として、ヒトパピローマウイルス(HPV:Human Papillomavirus)の感染が関連していることは明らかになっています。HPVは性交渉で感染することが知られ、多くの場合、感染しても免疫によって排除されますが、感染が続くと、一部、子宮頸がんが発生すると考えらえているのです。
子宮頸がんの発生と関連が深い一部のHPV感染はワクチンにより予防できるとされ、初めて性交渉を行う前の接種が望ましいことから、9歳から接種が可能です。
日本では、2010年度から公費助成が開始され、2013年には予防接種法に基づき定期接種化されました。しかしワクチン接種後に甚大な副反応に見舞われたケースが大々的に報じられるとと、国は「接種の積極的勧奨の中止」の方向に舵を切ります(一方で現在、厚生労働省はHPで『「多様な症状」の報告を受け、様々な調査研究が行われていますが、「ワクチン接種との因果関係がある」という証明はされていません』とコメントしています)。
公費助成当時の接種対象だった1994~1999年生まれの女子は接種率70%程度にまでなっていましたが、2000年以降生まれの女子は1%未満という状況になっています。
そしてこのような状況に対し、2030年までに子宮頸がん根絶を目指すWHOは、本来ワクチンで予防できる子宮頸がんのリスクにさらされている日本を厳しく批判しています。
また積極的ワクチン接種の中止から8年あまり、「HPVワクチンが大量に廃棄され続けていたことが報告されると、4種のHPV感染を防ぐ4価ワクチン「ガーダシル」のメーカーMSDは、「今後、日本を優先し確保したワクチンを廃棄しなくてはならないリスクがある」と異例のコメントを発表しました。MSDが製造販売する「ガーダシル」は、肛門がん、中咽頭がん、陰茎がんなどにも効果があるとして100以上の国と地域で男性接種が承認され、世界的に需要が逼迫しています。
田村憲久厚生労働大臣は勧奨再開に向けて検討すると表明したものの、コロナ対策が優先事項であり、HPVワクチンについては後回しという姿勢。日本は「HPVワクチン」を欲しても手にすることができない……そんな危機に見舞われているのです。
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