利用者・介護者と話をする時間は長くても30分
「利用者の話をとことん聞くという姿勢をもっているのは、良いケアマネと思われるかもしれません。でも私の経験上、何時間もケアにかんする話がつづくことはない。大半はケアとは関係ない世間話になっているんです。
もちろん、それに意味がないとはいいませんよ。とくに介護者はストレスをためこんでいて、誰かに話を聞いてもらうことでスッキリして気持ちを立て直せる効果があります。その意味では時間をとって話を聞くのも大事ではあるのですが、一軒に時間をかけすぎると、ほかの利用者さんの訪問にしわ寄せがいくことがありますから、ケアマネとしては、ほめられた行動とはいえません」
こう語るケアマネは、モニタリングでの訪問時、利用者・介護者と話をする時間は長くても30分と決めているそうです。この時間でも十分、重要な困りごとや悩みを聞くことはできる。すぐに答えが出ないような課題であれば、「考えてみます」といって帰り、翌週、いくつかの解決策を用意して再訪するようにしているといいます。
このように、1回の会話を短くし、何度も訪ねて話の内容を深めていったほうが、より良い解決策が模索できるし、ケアマネと利用者・介護者との人間関係も築けるというのです。
ケアマネは、ほかにも多くの利用者を担当しています。日々、訪問の予定を立て、それに合わせて各利用者の課題も頭に入れておくなどの準備もしています。引きとめて世間話をするのは、そうしたスケジュールを崩してしまうことでもあり、避けたほうがいいのです。
「ケアマネがモニタリングで来る日が近づいたら、前もって質問したいことや相談したいことをメモに書いておくといいと思います。そしてモニタリングが終わったところで、それらを簡潔に聞くようにする。その程度だったら負担にもならないですし、たいていのケアマネは面倒くさがらずに答えてくれるはずです。ただし、ケアマネもつぎの予定が入っているので、『無理に引きとめない』という気づかいは見せてください」
そのように利用者・介護者の側が適度なコミュニケーションを求めることは、ケアマネとの距離を近づけることになりますし、やる気を引き出すことにもつながるのです。
また、もし質問や相談に対して面倒くさそうな素振りを見せたり、しっかりと考えもしないで答えるようだったら、ダメなケアマネである可能性が高い。そんな判断材料にもなるわけです。だから、利用者・介護者もケアマネがいうことをただ聞くだけの受け身の姿勢をとるのではなく、積極的にアプローチしたほうがいいということです。
なお、質問や相談する機会はモニタリングのときだけとは限りません。こちらから電話連絡すれば、予定が入っていない限り、来訪し話を聞いてくれるそうです。
ケアマネはだいたい、朝9時には所属する包括や事業所に来て、仕事の準備をしたり事務処理をし、10時ぐらいには利用者への訪問にでかけるそうです。ですから、10時までに連絡すればつかまりやすいですし、不在の場合も用事があることを伝えれば、折り返しの電話があり、スケジュールを都合して来てくれるものです。
利用者・介護者にはどことなく遠慮があって、連絡したら迷惑ではないかと思いがちですが大丈夫。大半の利用者は同様の遠慮があり、連絡することはないですから、十分対応できるといいます。遠慮などすることはないのです。
相沢 光一
フリーライター