従業員に効率よく「経営者の考え」を伝えるには…
西院の佰食屋は14席の小さなお店のため、お席を30分で代わっていただく必要があります。
あるとき、従業員が座ったばかりのお客様に対し、「お席のお時間は30分しかありませんのでご協力ください」とはっきり言ってしまったことが、クレームになったことがありました。「これから食べようとしているのに『30分で帰れ』なんて気分が悪い」と。
仰るとおりです。わたしはすぐに店頭へ出向き、お客様に謝罪しながらも、こう対応しました。
「大変申し訳ございません。当店はご覧のとおりとても狭くて小さなお店です。しかし、多くのお客様が楽しみにお越しいただいておりますため、できるだけ多くの方にお召し上がりいただきたいとも思っております。
お急ぎになる必要はまったくありませんので、当店の料理をじっくり楽しんでいただきました後、可能な範囲で結構ですので、次のお客様にお席をお譲りいただけると大変ありがたく存じます」。
そして、従業員にも「最初から30分と伝えるのではなく、30分経ってまだお会計をいただけないようなら、『お済みの食器をお下げしますね』とお声がけしてください」と伝えました。
こうして西院の佰食屋に従業員たちに染み込んでいったイズムを、すき焼き専科のオープンにあたって、もっとわかりやすい形で共有できないか。そう考えて、クレドが生まれました。
「現場で起きたことは現場で解決」体制のメリット
クレドには、「What(なにを)」は書かれていますが、「How(どうするか)」は明示されていません。「今日(現場)の責任を担う」ために、自分たちにはどんなことができるのか。従業員たちにはみずからそれを考え、行動に移してもらいたいからです。
佰食屋が3店舗体制になったとき、経営者であるわたしの役割はより明確になりました。
わたしは宣言したのです。
「わたしは基本的にはもうお店に出ません。その代わり、みんなが楽しく働けるように、いろいろと仕掛けていきますね」と。
週に1回、各店舗へ様子を見にいく以外、店頭に立つ機会がほとんどなくなりました。その代わり、わたしは広報、人事、財務などの仕事に集中しています。
現場にも権限移譲を進めていきました。いまではわたしが直々に出向かなくてはならないほど大きなクレームも少なくなってきました。
料理をこぼしてしまったり、服が濡れてしまったりといったトラブルの際、交換や返金・クリーニング対応など、一定の金額まではすべて現場判断で行い、事後報告でかまいません。
お店をよりよくする工夫や改善すべきところがあれば、各店判断で1万円以内であれば使っていいことにしました。
こうして、「現場で起きることは、現場で解決する」体制が整ってきました。
だからこそわたしは、社外でさまざまなアイデアを吸収して、会社に還元し、佰食屋の働き方を多くの人に伝える機会を得たのです。
中村 朱美
株式会社minitts
代表取締役
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