株価は上がる・下がる・横ばいの3つの値動きしかない
なぜ、株式投資だけでなく、為替や商品の取引でもチャート図は活用されているのでしょうか。
それは、株価に限らず価格の変動を考えた場合、基本的に価格は上昇するか下落するか、横ばいかの3つの動きしかないなかで(これは誰が考えても同じ結論になるはずです)、値動きが現在どのようになっているのか、また今後どのように変化していくのかを教えてくれるものだからです。
例えば、価格はランダムに動くとする人がいたとしても、短期的にはランダムに動いているようにみえても、徐々に価格が切り上がっていれば上昇していると判断できるでしょうし、逆に価格が切り下がっていれば下落していると判断できます(図表1、図表2参照)。
[図表1]日産自動車(7201)の日足チャート
[図表2]明治HD(2269)の日足チャート
一方で、価格の動きが止まっているということはめったにありませんが、一定の範囲内で値動きが限定されているのであれば、それは価格が横ばいと判断できるでしょう。これを横ばいチャートと呼びます(図表3参照)。
[図表3]日本ハム(2282)の月足チャート
「自分の感覚」で売り買いするのは危険
こうした値動きを教えてくれるのがテクニカルチャートであり、価格が上向きであるとか、下向きであるとか、横ばいであるとか、この3つの方向を知るためにテクニカルチャート分析が必要なのです。
仮にテクニカル分析で下落していると判断された株を保有しているケースでは、おそらく含み損が拡大することになるでしょう。一方で、テクニカル分析で上昇していると判断された株を保有しているケースでは含み益の拡大が期待できます。
ここで紹介したように株価の推移を教えてくれるチャートの推移をみるだけでも、なんとなく株価の方向がみえてきます。ただ、こうした基本的なテクニカル分析もマスターせずに自分の感覚だけで売買した場合、どうなるでしょう。
自分が売ってしまった後も上昇が続いただとか、自分が買ったあとに下がり始めたといったことになってしまったり、利益は出たけれども、もう少し早く買っておけばよかったとか、もう少し買うのを待てばよかったとか、こうした後悔をした方も沢山みかけられます。
もちろん、必ず分析通りになるわけではありませんが、実際の日経平均株価のチャートをご覧ください(図表4参照)。チャートをみると、1989年に高値をつけたあと下落基調が続いているのがわかります。
[図表4]日経平均株価の推移(©日本経済新聞社)
仮にこのように下落基調になる中で、株を保有し続けたらどうなるのでしょうか? もうおわかりのように、含み損がどんどん増えるでしょう。
また、長期投資を目指す人は、「いやいや、いつか買値まで戻ってくるから大丈夫」といって、戻るまで待ち続けることになっても本当に大丈夫なのでしょうか。
もちろん、仮にITバブルといわれた2000年4月の高値でETF(日経平均株価などの指標への連動を目指す投資信託)を買った人がいたとしても、2015年6月24日に終値で2万868円03銭をつけるなど、2万円台を回復していますので、含み損はなくなったことになりますが、回復するまで約15年2カ月かかっており、これだけ長い時間、その資本を、有効に活用できなかったということになってしまっているのではないでしょうか。
投資のど素人に加え、ともすれば、知識と経験が豊富な長期投資を目指す人がこうしたいわゆる塩漬け状態に陥りやすく、こうした状態を防ぐためにもテクニカル分析は有効です。
なぜなら、これまで説明してきたように、株価の方向や売買タイミングに加え、将来株価を予測することができるツールだからです。
中長期保有を考えている人こそテクニカル分析を学ぼう
たとえば、前述のETFの例と同様に、NISA口座を活用して株を買った場合はどうでしょう。
税金が優遇されるのは利益に対してですから、右肩下がりの銘柄を長期間保有していても、何のメリットにもなりません。むしろこうしたNISA口座を活用して中長期で投資したいと考えている投資家こそ、テクニカル分析を学ぶべきだと私は考えています。
なぜなら、繰り返しになりますがテクニカル分析は、株価の方向や売買タイミングに加え、将来株価を予測することができるツールだからです。
特にど素人にとって、「シンプルであること」、「客観的であること」、「判断がぶれないこと」などが重要だと思われますが、本連載で紹介するテクニカル分析(将来株価予測を除く)は、これらの条件を満たしているものですから、安心して活用してもらえるでしょう。