少子高齢化の影響などを背景に転職者の平均年齢はあがっているものの、35歳を超えると転職の難易度は一気に上がります。その要因の一つに「バイアス(偏向・先入観)のワナ」があると、大手転職サイトの元編集長、黒田真行氏はいいます。35歳以上の転職を邪魔する「バイアスのワナ」とは具体的にどのようなことを指すのか、事例を踏まえて見ていきましょう。※本連載は、黒田真行氏の著書『35歳からの後悔しない転職ノート』を一部抜粋・再編集したものです。
大手転職サイトの元編集長が語る「35歳以上のエリートほど嵌るワナ」 (※写真はイメージです/PIXTA)

自分がバイアスを受けていることを理解していますか?

私はキャリア相談を受けるなかで、人が未来を考えるうえで大きく邪魔をしているものがあることを確信するようになりました。それが、バイアスです。日本語では、偏向や先入観、思い込みといった意味になるかと思います。

 

たとえば、正常化バイアス。自分に都合の悪い現実、見たくない現実は見たくないという心理です。

 

見ようとしない。認めない。自分がバイアスに歪められていることにすら気づいていない。それゆえに、新型コロナウイルス感染症が大きな問題になっているときに、ごく普通に満員電車での通勤を考えてしまう。豪雨のため住めないほど被害を受けた家を、ひたすら掃除してしまう……。バイアスは、知らず知らずのうちに、人を歪んだ行動へと駆り立ててしまいます。

 

新聞社に勤める30代の方から相談を受けた話ですが、次の就職先の候補としてネットメディアの話が出たとき、ご本人からこういう発言がありました。

 

「インターネットは怪しい情報が多いので信用できません」

 

インターネットが一般社会に登場したばかりの1990年代の話ではありません。2020年の話です。しかも、ショッピングしかり、レストラン情報サイトしかり、旅行予約しかり、自分自身も含めてインターネットを普通に生活のなかで使っているのです。

 

ところが、転職先として考えると「怪しい」という印象値が出てきてしまう。まさにインターネットを仮想敵と考えてしまう人がまだまだ多い新聞業界ならではのバイアスのなせる技です。(もちろん業界の人のすべてがそうでないことは承知していますが)

 

銀行に勤める人とキャリア相談をしていても、似たようなことが起こります。インターネットバンキングが進み、ICカードやスマホでの決済が当たり前になり、今では銀行の支店はどんどん縮小しています。

 

この先、支店が拡大していく見込みはまずない。自分の働く場がなくなる可能性は極めて高くなることは明らかです。

 

ところが、銀行で長く働いてきた人ほど、土地勘があるからという理由で、転職先の希望業界を聞くと「銀行」という言葉が出てくる。しかも、ライバル銀行でも構わないから知名度の高い銀行がいい、という話になりやすい。

 

今やどの銀行でも構造は同じであることは明らかなのですが、なぜか隣の芝生が良く見えてしまう。これもまた、バイアスです。