少子高齢化の影響などを背景に転職者の平均年齢はあがっているものの、35歳を超えると転職の難易度は一気に上がります。大手転職サイトの元編集長、黒田真行氏は、転職の際、大きな足かせになるもののひとつとして「報酬の問題」があるといいます。「前職の年収」にこだわった結果、転職後に早期退職してしまうケースなど、「報酬」にこだわり過ぎることによる弊害を見ていきましょう。※本連載は、黒田真行氏の著書『35歳からの後悔しない転職ノート』を一部抜粋・再編集したものです。
「前職の年収」にこだわる転職者が早期退職してしまうワケ【大手転職サイトの元編集長が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

年収1000万円と920万円…80万円の差は大きくはない

転職の際、最も大きな足枷になるもののひとつに、報酬の問題があります。今ある年収が転職によって下がってしまうことは不可能だ、と考える人が少なくないのです。

 

実際、年収が1000万円以上でなければいけないと、920万円の年収を提示されたために断ってしまった、という実例がありました。差額はわずか80万円です。もしかしたら、自分に合った仕事で、将来的に年収が上がる可能性もあったかもしれないのに、初年度年収のたった80万円の差額で、チャンスをみすみす捨ててしまったのです。

 

では、80万円下がったら、生活にどんな変化が起きるのでしょうか。社会保険料や税金は年収が大きくなるほど増えるため、額面で80万円の違いは、手取りにすると約60万円の差額となります。手取り金額でいうと約720万円と約660万円です。根本的に生活支出を見直さなければいけないような差ではないのではないでしょうか。

 

[図表1]年収と手取り額の差
[図表1]年収と手取り額の差

一時的な給与ダウンを恐れては、大きな成功は掴めない

もう少しいえば、前職での年収は過去その企業で貢献してきたことによる昇給の結果であり、さらにいえば実績に対する報奨としての賞与が含まれていることも多いはずです。まだ実績を出していない会社の初年度年収とは前提条件が異なるので、横並びで比べること自体にも無理があります。

 

また、このチャンスを見逃すことで、次の転職先が見つかるまで収入が得られないロスタイムが生まれる可能性もあります。

 

もとより大きな年収ダウンを提示されたとしても、実力さえあれば、あとから成果をあげて昇給することも可能なはずです。特に未経験の業界に移ったり、新しい職種にチャレンジするときには、これまでの経験値が通用しないので、一時的に収入が下がってしまうことはよくあります。

 

しかし、経験を積み増していくことでスキルが高まり、それが成果につながっていくことで、入社後に大きく収入が上がる方はたくさんおられます。

 

ずっとひとつの会社にいた場合には得られなかったような年収の伸び率を、いくつかの会社への転職によって手にしている人だっているのです。もちろん、役割や権限でも以前とは比べ物にならないポジションを手にする人もいる。

 

ところが、一時的に給与が下がってしまうからと、チャレンジに踏み出せなかったら、こういう変化も起きようがないわけです。