少子高齢化の影響などを背景に転職者の平均年齢はあがっているものの、35歳を超えると転職の難易度は一気に上がります。大手転職サイトの元編集長、黒田真行氏は、転職が上手くいかない人に「あなたは自分にいくら給与を支払えますか」と問いかけます。転職を検討する際に意識しておくべき「給与」に対する心構えを見ていきましょう。※本連載は、黒田真行氏の著書『35歳からの後悔しない転職ノート』を一部抜粋・再編集したものです。
「あなたは自分にいくら給与を支払えますか」…転職コンサルタントからの問いかけ (※写真はイメージです/PIXTA)

自分が、自分に給料を払うとしたら?

年を重ねるほど、転職活動の深刻度が上がっていく以上、早くから準備をすることしか対策はありません。

 

とはいえ、誰も確実に10年先が読み通せるはずはありませんから、対策といっても仮置きでいいのです。後でいくらでも書き直して構わない。とにかく自分の頭で考えた、ひとつの道しるべを作っておくことが大切です。それを戦略的に考える。

 

そのためのワークショップを本記事では用意しました。今回の思い切って振り切ったワークは、「自分株式会社」について考えてもらうことです。

 

転職をするのではなく、今起業して会社を作り、自分の持っているスキルで事業を始めるとしたらどうか。それを考えてみてもらいたいのです。

 

起業なんてするつもりもないし、選択肢にもない。そういう人も多いと思います。ある意味、転職をして会社を替わることと対極にある選択といえるかもしれません。しかし、だからこそ、そこに近づいてみることで気づけることがあります。

 

たくさんの転職支援やキャリア相談に関わるなかでキャリアチェンジが思うように進まない人たちの多くに、偏った考え方や思い込みがみられました。

 

その考え方のままではうまく進みようがないのに、軌道修正することなく転職活動を進めて、時間切れになってしまう。希望する企業からすべて「お見送り」となってしまう。そういうことが現実に起こり得るのです。

 

そして、私はその考え方をもたらしている最大の要因のひとつは、「雇われることしか選択肢にない」ということではないかと思い至るようになりました。だから、雇用する側の目線になれない。報酬を支払う側の目線で発想できない。買い手が望んでいる「売り」を見つけられないし、アピールできない。

 

雇用されることに執着するあまり、雇用する側から見た自分が見えなくなる。報酬と給与がごちゃまぜになり、給与は自分が提供できる価値の実勢価格であり、価値と金銭を交換している、という事実に気づけなくなってしまうこともあります。

 

たとえば、待遇が充実した大手企業に勤めていて、年収が1000万円だったとします。面接のタイミングで、「前職が1000万円だったので、次は1100万円を希望します」と言ってしまう人がいるのです。本人としてはごく自然な発言として、普通に口にしてしまう。

 

しかし、もし会社が1000万円を給料として支払うのであれば、その人が最低でも1000万円以上の利益をもたらさなければ、会社は赤字になってしまいます。

 

社会保険やその他経費を考えると、年収の3倍の粗利を稼ぐ必要があるという見方もあるほどです。まず必要なのは、最低1000万円の利益を出せる見立てを伝えることであって、その向こうに初めて、自分の取り分の報酬の話があるわけです。

 

こういうことも「自分株式会社」を作るプロセスで見えてきます。自分が自分を雇用するとしたら、という視点移動が起こしやすくなります。