良好な人間関係がより良い介護につながる
評判の良いケアマネはこの点が異なります。まず、説明がていねい。介護初心者の利用者・介護者にもわかりやすく、介護保険やサービスのシステム・ケアマネの役割、ケアプラン、ケアの進め方などを説明します。
また、月に1回の訪問時もモニタリングだけで終わるのではなく、利用者・介護者に質問をし、コミュニケーションをとろうとします。ケアマネは介護という公的システムを運用する専門職。前述したように、利用者・介護者にとっては役所の職員のように見えて、それが心理的な壁となってなかなか心を開いて話ができないものです。ですから、どこまで踏みこんだ話をしていいかわからない。良いケアマネは自分からその壁を取り払うアプローチをするのです。
利用者・介護者の出身地や仕事を尋ねたり、相手の様子を見て困っていそうなことがあったら聞いてみたりする。人は相手が自分に興味をもち、質問されるのは気分がいいものです。最初は一方通行の質問でも、それをつづけることで、相手は心を開くようになり、やがて双方向のコミュニケーションになって人間関係が築かれていく。それによって意思の疎通が図られ、より良い介護につながるのです。
問題はダメなケアマネの多くがそれを怠っていることですが、だとしたら利用者・介護者のほうからアプローチすればいい。私と親しいケアマネは、こう教えてくれました。
「どんな質問や要望も話してもらって大丈夫ですよ。ケアマネは利用者さんやご家族の話を聞くのも重要な仕事。抱かかえている事情を知ることはケアを考える材料になりますし、大歓迎です。ケア以外でも、自身のストレス、仕事の悩み、施設入所のことなど何でも聞いてもらってかまいません。解決できる保証はありませんが、一般の方よりくわしいはずですし、アドバイスはできる。それに解決できなくても、話をすれば気が楽になることもありますし」
ケアマネには心を開いて接するようにしたほうがいいのです。ケアマネのやる気を引き出す対応を心がけることも大事です。それがダメなケアマネを良いケアマネにすることもあるのです。訪問時は笑顔で迎えるといったことから始めるのもいいのではないでしょうか。
■ケアマネと自分たちの関係は「1対1」ではない
ケアマネと良好な人間関係を築くには、彼らがふだんどんな仕事をしているかを理解しておくことも大切です。
ケアマネはかなりハードな日々を送っています。ひとりが担当している利用者は30人前後。多い人になると35人、場合によってはそれ以上を担当しているケースもあります。
担当している30人前後のなかには、独居で寝たきりの人もいるかもしれない。介護者が虐待をしている家や利用者本人が徘徊をくり返すことに悩んでいる家が含まれている可能性もあります。そういう利用者はケアマネも毎日のように様子を見に行かなければならず、そのうえで担当する30件を目配りするのは相当大変です。