介護は利用者とその家族との人間関係がすべて
■利用者・介護者しだいでケアマネの仕事ぶりは変わる
ケアマネのなかには、利用者・介護者のニーズに応えてくれない人、相談したいのに親切に対応してくれず、困っていることも解決してくれない人もじつはけっこういると述べてきました。
しかし、その責任はケアマネだけにあるのではなく、利用者・介護者の側にも問題があるケースが多いのです。親しいケアマネに話を聞くと「介護支援がうまくいくかどうかは、利用者さんやその家族との人間関係がすべて」という言葉がよく出てきます。
ケアマネも感情のある人間です。介護に前向きな姿勢をもっていて訪問したときは笑顔で迎えてくれる、担当ケアマネをリスペクトしていて、アドバイスを素直に受け入れてくれる──こういった利用者・介護者には「この人たちのために一生懸命やろう」と思うものです。
ところが、利用者(親)と介護者の関係が悪いらしく、介護を嫌々やっている、ケアマネが訪問しても面倒くさそうに対応し、それでいてサービスに不満があるとクレームをつける、といった人には気持ちが入らず「一応、ケアマネの務めだけは果たしておこう」という感じで仕事にあたるわけです。
つまり、利用者・介護者の対応しだいで、ダメなケアマネも良い仕事をしてくれる可能性はあるし、良いはずのケアマネもダメな仕事ぶりになってしまうことがあるのです。
ただ、それ以前の問題で、利用者・介護者の側にケアマネとの人間関係を築く気がない人が多いのもたしかです。そもそもケアマネがどういう立場の人で、自分の家の介護にどう関与しているのかも知らない人が少なくありません。
介護が始まるときに来て話を聞き、ケアプランなるものをつくってもってきた。了承すると介護サービスが来るようになったが、ケアマネは月に1回顔を出す程度。何やら重要な役割をもっていそうだが、顔はわかっても名前は思い出せない……そんなつき合い方しかしていない人が多いのです。
こうなるのはケアマネ側に問題があります。最初に自分がどんな立場で、今後の介護にどのように関与するのか、しっかり説明していない。月に1回の訪問(モニタリング)も何のために行なうのか知らせていなかったりする。そしてモニタリングが終わると、さっさと帰ってしまうケアマネもけっこういるのです。
利用者・介護者にはケアマネに対して、漠然とした遠慮をしてしまう心理があります。相談したいことや要望があっても、どこまで話していいものかわからず、ちゅうちょしてしまうことがあるのです。それは、事務的な対応をしがちなケアマネが多いからでしょう。人間関係を築くアプローチを行なっていないのです。