300万円以下の罰金も…訴えられる、3つのポイント
この事例におけるAさん、Bさん、XXX不動産側の行動の問題点について解説していきます。
1 相続と不動産の共有
相続が起こった際、相続人が複数いるときは、相続財産である不動産は「共有」という状態になります。そこで通常、「遺産分割協議」という話し合いで、どのように相続財産を分けるか決めなくてはならないのです。
共有という状態は、不動産を真っ二つに分けて所有するということでなく、共有者全員が、その不動産全体にある程度の権利を及ぼしている状態です。
たとえば2分の1の持分を持っているときは、事例のように、ほかの共有者の同意がなくても持分を売ることができます(持分譲渡自由の原則)。しかし、2分の1を超える持分を持っていないと「貸す」ことはできません(共有物の管理。民法252条)。
また、大規模なリフォーム等はほかのすべての共有者から同意を得なければできません(民法251条)。
本件でも、2分の1の持分を他人に売ることはできますが、大規模なリフォームをするには共有者から同意を得る必要があります。
なお、共有物件のようないわくつきの物件を専門に買い取る不動産業者もあります。そのような難しい物件の問題を解決することによって利益をあげようとしているのでしょう。
2 非弁行為とは
弁護士以外の者が、報酬をもらって誰かの代理をすることは「非弁行為」という犯罪になります(弁護士法72条)。
本件でも、BがAから報酬をもらっているようであれば犯罪が成立する可能性があります。2年以下の懲役又は300万円以下の罰金というそれなりに重い犯罪です。
なお、弁護士が非弁護士と提携して、非弁護士が実質的に弁護士業を行う「非弁提携」というものがたまに見かけられます。この場合も非弁行為として罰せられる場合があります。
3 共有物分割請求訴訟
不動産を共有で持っていて、共有者同士でどのように分けるか協議で決まらない場合は、裁判所に共有物分割請求という訴訟を提起することができます。
この訴訟においては、たとえば訴訟を提起したAが「~円で買い取りたい」という内容で提起することもできるし、裁判所で競売をしてもらいたいという内容で提起することもできます。競売とは裁判所が主導となっていわゆるオークションをする手続で(民事執行法)、通常1年以上かかります。
また、裁判所に完全に判断を委ねるということも可能です。
そのようななか、裁判所が各事実関係を総合して、柔軟に結論を出してくれます。裁判手続が進むなか両者の意見が合致するときは、その結論で和解をすることもできます。
4 最後に
相続の問題は、もっともお金が動く手続の一つであり、入り込んでこようとする不動産屋や各士業、ブローカー等の第三者も非常に多いです。
こじれているところに第三者が入り込んでくるとますますややこしいことになるので、注意が必要です。
やはり相続の問題でトラブルを避けるには、事前に遺言を作っておくことが一番重要です。認知症になったあとでは遺言の効力がないこともあるので、簡易なものでも構いませんから、早いうちに作成しておくべきでしょう。
櫻井 俊宏
弁護士法人アズバーズ代表
中央大学法実務カウンセル
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