原油価格は高値から反落
■北米の代表的な原油指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物価格はこのところ下落基調となっています。7月中旬には一時1バレル75ドルを超えて2018年以来の高値となったものの、その後は8月中旬にかけて2割近く下落しました。
経済再開期待が剥落金融緩和縮小観測も
■これまではワクチン接種の進展により世界的に経済活動が正常化に向かい、原油の需要回復期待が高まっていました。しかし、その後は感染力の強い新型コロナウイルスのデルタ型が拡大したことで、スムーズな経済再開への期待が剥落しています。
■米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、資産購入の減額(テーパリング)について議論したことを表明しました。こうした米国の金融緩和縮小観測を受けて為替市場で緩やかなドル高が進んだことも、原油価格を抑える要因となっています。
脱炭素の動きにも注目
■当面はデルタ型の感染動向と経済再開ペース、FRBの金融政策に注目が集まります。
■脱炭素の動きも原油価格の変動要因となる可能性があるため注目です。8月9日には気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、CO2などの温室効果ガスの排出を大幅に減少させない限り、2021~2040年に世界平均気温が産業革命前と比べて少なくとも1.5度上昇すると予測する評価報告書を発表しました。こうした世界的な脱炭素機運の高まりも一因となって、原油開発を行う企業の間では事業縮小の動きが見られています。7月には日本の石油資源開発がオイルサンド事業からの撤退を表明しました。需要面での脱炭素の動きが不十分な中で供給抑制の動きが続けば、原油価格が上昇に転じる可能性があります。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『原油価格はデルタ型拡大、金融緩和縮小観測から下落』を参照)。
(2021年8月24日)
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