地方の受験生の都内私立大受験控えで受験校数減少へ
国公立大医学部の志願状況が対前年度指数で99にとどまり「新型コロナ感染症の影響はほとんど見られない」(宮辺氏)のとは異なり、対前年度比指数90まで落ち込んだ私立大は、明らかに2021年度特有の事情を抱えていそうだ。
その事情について「医学部自体が敬遠された訳ではない」と宮辺氏と推測する。
私立大医学部の31校のうち11校が都内にある。これまでなら地方出身の受験生は一週間程度都内のホテルに宿泊し、その間に複数の大学を受験して自宅に戻っていくのが一つの受験パターンだった。
しかし、2021年度は状況が一変する。「都道府県をまたいだ移動を敬遠し、都内に長居することを避けたい」と思う受験生は多かった。そこで受験校を厳選し、受験日前日にピンポイントで都内に宿泊し、終わったらすぐに地元に戻っていった。そうなると勢い一人の受験校数は限られてくる。
さらにこれまでは都内の私立大と地元の国公立大の双方に合格した場合、都内の有名私立大医学部への進学を決める生徒は珍しくなかった。しかし、終わりのみえないコロナ禍で、「都内の私立大ではなく地元の国公立大に何としても進学したい」という地元回帰の志願者が増大し、都内の私立大を第2志望以下として考える生徒が例年になく多かった。このことも2021年度の特徴といえる。
>>【画像】コロナ禍で行われた2021年度「医学部受験」の動向<<
学費値上げに踏み切った昭和大学、東京女子医科大学
親の懐状況は2021年度入試動向に大きな影響を与えなかったとはいえ、かつて私立大医学部の学費の引き下げは、受験動向に大きな変化をもたらした。その顕著な例が順天堂大学で、2008年度の学費値下げにより一挙に難易度がアップしたことは、第1回で紹介した通りだ。
2020年度、2021年度で特筆すべきは同じ学費の見直しでも、値上げに踏み切る大学がでたことだ。昭和大学は、過去に一度下げた6年間の学費を2020年度には500万円引き上げた。実施した2020年度の志願者数は、前年度の5650人から4419人に激減。しかし、2021年度は、多くの私立大が志願者を減らす中で増やしている。
この点について宮辺氏は①昭和大学は、一般選抜入試Ⅰ期で上位に入れば、授業料が免除になる制度を整える。②500万円値上げしても6年間の学費総額は2000万円代にあると指摘した上で、「私立大の志願者数を左右する最大の要因は、試験日程」と語る。
私立大の受験日程は毎年集中しており、入試日が重なる日が必ずある。2021年度を例にとるなら、1月19日以降の3週間で受験日が重複した日が10日あった。難易度が拮抗する大学の受験日が重なれば受験生は選択を迫られ、当然志願者は割れる。逆に単独日程だと志願者は集まる。
事実、2021年度の昭和大学の一般選抜入試Ⅰ期は単独日程となり、このことが志願者増に大きく寄与したといえそうだ【表2】。