具体的に「互助」とはなんなのか?「二人の兄弟」の話に見る
■「互助」に欠けた実業家
われわれ実業家は経営に力を注がねばならない。同時に、次のことを自覚してほしい。「自分のビジネスが上手くいけば国家も栄えていくはず」と期待しても、そうなるとは限らないのだ。
もともと、わが国の一般的な気風を考えてみれば、性格的に「自助」にはかなり向いている。しかし、「互助」については大いに欠けたところがないか。
■「互助」から得た幸福
こんな話がある。
「二人の兄弟がいた。一人は相続したカネを使って、一生懸命に事業を経営したものの、数年後、わずかな資産を増したに過ぎなかった。
一方、もう一人はたいした努力もせず、相続したカネで土地を買ってそのままにしていた。だが数年後、その地域全体が発展したため、莫大な富を築いた」
要するに、苦心して働いた人の利益が少なく、とくに働きもしなかった人が幸運に恵まれた――。これだけ見ると釈然としないものを感じる。しかし、これは社会全体が与えた幸福であり、国運発展のおかげなのだ。
人は自分の力だけで世の中で生きていくことはできない。これはとりもなおさず、助け合いと協力が大切だということを意味している。