アフガニスタン政権崩壊とタリバンの復権~株式市場への影響は? (※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●アフガニスタンではタリバンが8月15日に大統領府を掌握し現政権は事実上崩壊、タリバン復権へ。

●米軍の撤退やアフガニスタン治安部隊の低い士気などが、8月以降のタリバン急進撃につながった。

●株式市場は新政権樹立の織り込みを終え地政学リスクに警戒しつつ政権の体制を見守る段階へ。

アフガニスタンではタリバンが8月15日に大統領府を掌握し現政権は事実上崩壊、タリバン復権へ

アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンは8月15日、首都カブールに進攻し、大統領府を掌握しました。タリバン幹部は同日、ビデオ声明で勝利を宣言した一方、国外に退避したとみられるガニ大統領は、自身のフェイスブックでタリバンの勝利を認めました。これにより、アフガニスタン政権は事実上崩壊し、タリバンが再び政権を握ることが確実になりました。

 

タリバンとは、アラビア語で「神学生」を意味します。1980年代に旧ソ連がアフガニスタンを侵攻した際、多くの難民が隣国のパキスタンに逃げ込みましたが、パキスタンのイスラム神学校で教育を受けた難民の子供たちを中心に、1994年に結成されました(図表1)。1996年に政権を樹立しましたが、米同時多発テロ事件の首謀者の身柄引き渡しを拒否したため、米国が軍事作戦に踏み切り、2001年にタリバン政権は崩壊しました。

 

(出所)各種報道を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]タリバンを巡るこれまでの動き (出所)各種報道を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

米軍の撤退やアフガニスタン治安部隊の低い士気などが、8月以降のタリバン急進撃につながった

タリバン復権の背景には、アフガニスタンからの米軍の撤退という要因があります。米国は2011年以降、軍事費削減を求める議会などの声を受け、段階的に現地駐留部隊の規模を縮小しました。その後、米国とタリバンは2020年2月に初めての和平合意に署名、今年1月に発足したバイデン政権は、アフガニスタンからの完全撤退の時期を8月末とする方針を7月に発表しました。

 

これを受け、反攻の機会をうかがっていたタリバンは、8月に入って次々と州都を制圧し、8月13日までに34州都のうち18州都を制圧しました(図表2)。

 

(出所)各種報道を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]2021年8月のタリバンの急進撃 (出所)各種報道を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

米国防総省などによると、アフガニスタン政府の治安部隊の兵力は約29万人、タリバンの主要兵力は約6万人とみられます。ただ、治安部隊の士気は低く、私兵組織などを加えたタリバンの兵力は20万人超という指摘もあり、これらがタリバン急進撃につながったと考えられます。

株式市場は新政権樹立の織り込みを終え地政学リスクに警戒しつつ政権の体制を見守る段階へ

1996年から2001年のタリバン政権では、映画や音楽の禁止、女性の就労禁止といった厳格なイスラム原理主義の統治が行われました。また、欧米では、アフガニスタンが国際的なテロ活動の拠点になるとの懸念も強くみられます。こうしたなか、タリバンの報道担当者は8月17日に記者会見を行い、イスラム法の下で女性の権利は尊重され、同法に基づく穏健な統治に臨むとの考えを示しました。

 

すでに株式市場は、タリバン政権の樹立までは織り込んだと思われ、この先は、政権樹立後、前回政権のような恐怖政治が再来しないか、国際テロ組織の温床とならないか、などが焦点になると考えられます。タリバンの政権運営次第では、地政学リスクが高まり、株式など金融市場に広く影響が及ぶ恐れもあるため、今後の新体制の枠組みを注意深く見守る必要があります。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『アフガニスタン政権崩壊とタリバンの復権~株式市場への影響は?』を参照)。

 

(2021年8月18日)

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 チーフマーケットストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介

投資情報グループは、運用や調査経験豊富なプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの情報発信を行っています。幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、年間で約800本の金融市場・経済レポートの発行の他、YouTube等の動画、Twitterでの情報発信を行っています。

著者紹介

連載【市川雅浩・チーフマーケットストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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