●4-6月期は前年のコロナによる業績低迷の反動で大幅な増収増益、途中経過の状況と変わらず。
●企業の2021年度業績予想は増収増益の総じて良好な内容だったが市場の期待水準に届かず。
●好決算でも日本株は低調、ただコロナや米中景気などへの懸念が和らげば反発の余地は拡大へ。
4-6月期は前年のコロナによる業績低迷の反動で大幅な増収増益、途中経過の状況と変わらず
東証株価指数(TOPIX)を構成する3月期決算企業(金融とソフトバンクグループを除く)のうち、8月13日時点までに4-6月期の決算発表を終えた企業は1,300社を超えました。企業数ベースの進捗率は99%台に達し、決算発表はほぼ終了しました。そこで、今回のレポートでは、集計データに基づいて4-6月期決算を総括し、それを受けた株価の反応を考察します。
2021年4-6月期の実績は、前年同期比で売上高は21.6%増、営業利益は241.7%増、経常利益は234.7%増、純利益は443.7%増でした。8月4日付レポートでお伝えした途中経過から変わらず、大幅な増収増益となりましたが、新型コロナウイルスの影響で業績が低迷した前年からの反動によるところが大きく、製造業・非製造業の区分でみると、今回は製造業の純利益が急回復しました(図表1)。
企業の2021年度業績予想は増収増益の総じて良好な内容だったが市場の期待水準に届かず
次に、企業による2021年度の業績予想について確認します。業績予想を公表している企業について、入手できるデータに基づき集計したところ、前年度比で売上高は6.5%増、営業利益は30.4%増、経常利益は27.4%増、純利益は47.4%増という見通しが示されました(図表2)。業績予想の改定率は、順に+1.0%、+2.9%、+5.6%、+7.4%で、全体として上方修正の動きが確認されます。
8月4日付レポート『2021年4-6月期決算の途中経過と株価の反応』での途中経過に比べると、上方修正の度合いは改善しており、また、市場の業績予想と企業の業績予想との乖離率もおおむね縮小しました。ただ、今回の決算で、企業による通年度の業績予想は、上方修正の動きが確認されたものの、乖離率は売上高が-1.2%、営業利益は-6.4%、経常利益は-5.8%、純利益は-6.3%となっており、依然として市場の期待水準には達していません。
好決算でも日本株は低調、ただコロナや米中景気などへの懸念が和らげば反発の余地は拡大へ
進捗率については、売上高が24.0%、営業利益は28.0%、経常利益は31.3%、純利益は33.2%となり、利益の実績は4-6月期の目安となる25%を上回りました(図表1)。以上より、2021年4-6月期決算は、総じて良好な内容と考えられますが、株価の動きをみると、決算発表が本格化する前の7月16日から8月16日までの期間、日経平均株価は1.7%、TOPIXは0.4%、それぞれ下落しています。
背景には、①世界的なコロナの感染再拡大、②一部にみられる米中経済のピークアウト観測、③国内の政治イベント(9月30日の自民党総裁任期満了や10月21日の衆議院議員任期満了)などに対する懸念があると思われます。しかしながら、この先、時間の経過とともに、これらへの懸念が和らいでいけば、もう一段の業績改善の見通しにつながり、日本株が反転上昇する余地は広がるとみています。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年4-6月期決算の総括と株価の反応』を参照)。
(2021年8月17日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト