(写真はイメージです/PIXTA)

身近な人が亡くなり、相続税の申告が必要になったとき、「税理士に頼まなくても、自分で申告できるんじゃないか」と考える人もいることでしょう。相続税の申告は自分でできるか、それとも税理士に依頼するほうがよいのか、税理士法人トゥモローズの角田壮平税理士が解説します。

85%が税理士に頼む「相続税の申告」…自力でするには

2018年度の相続税申告件数は、被相続人は申告ベースで14万9481人、課税ベースで11万6341人。相続人は申告ベースで36万5440人、課税ベースで30万241人。2018年の死亡数が136万人ほどですから、亡くなった人の10人に1人は相続税の申告が必要な状況で、亡くなった1人に対し、2~3人の相続人がいる計算です。

 

さて、この15万人のなかで税理士に依頼している割合はどのくらいでしょうか? 財務省から公表された相続税申告にかかる税理士関与割合は約85%で、ほとんどの人が税理士に依頼しています。

 

所得税の税理士関与割合は20%であることを考えると、相続税申告は税理士に依頼するケースが非常に多いことがわかると思います。

 

以下で、「どのようなケースだと税理士に頼まずに、自力で申告手続きを行えるのか」を具体的に解説します。

 

1.ケースの状況

 

相続税申告を自分でやるのが向いているケースは、下記の要件を満たすような場合です。

 

□小規模宅地の特例、配偶者の税額軽減などの各種特例で相続税がゼロになる場合
□名義預金や生前贈与など過去に被相続人と親族の間で資金移動などがない場合
□相続人の間で争いになることが絶対にない場合や相続人が1人の場合

 

上記を満たさないようなケースでは、相続税申告を自分でやるのはやめた方が無難です。とくに納税が発生するようなケースは、税理士に頼んで少しでも相続税を下げてもらったほうがいいでしょう。相続税にくわしくない人が自分で申告をしてしまうと税理士報酬以上に過大に申告して損をしてしまうことがあるからです。

 

また、名義預金や生前贈与がある、または、あるかもしれないというケースは、自分で相続税申告をすることはやめておいたほうがいいでしょう。数年後の税務調査で税務署から指摘をされて数十万円、数百万円もの余計な税金がかかることがあります。このようなケースの場合には、最初から税理士に頼んで税務署に指摘されてない申告書を作ってももらいましょう。

 

そして、相続人の間で相続争いになる恐れがあるようなケースは自分でやらずに、公明正大に第三者である専門家に依頼したほうがいいでしょう。争いになっている、または争いになりそうなケースで、相続人の1人が財産目録を作ろうものなら他の相続人から財産を隠しているのではないかと疑われる場合がありますので、第三者を入れたほうがスムーズに終わります。

 

2.相続人の状況

 

相続人の状況によっても自分でやるのが向いているケース、向いていないケースがあります。自分でやるのが向いている相続人は下記の要件を満たす人です。

 

□平日の昼間に時間が取れる人

□相続税の基礎知識をある程度持っている人

□数字が苦手ではない人

 

まず、相続税申告手続きは、資料収集や相談窓口ともに平日の昼間にしか開いていない機関が多いです。

 

たとえば、残高証明書は銀行で取得しますが、平日の夜間や土日はやっていません。また、資料をそろえて、いざ、財産の評価をしようとしたときに、疑問が生じたとします。土地の評価などは非常にややこしいので建築指導課や都市計画課などの役所に確認しないといけないことも出てきます。この役所は平日の昼間しかやっていません。さらに、相続税の申告書を作成する上で税務署に確認したいことも必ずでてきますが、こちらも平日のみの営業です。

 

このように、自分で相続税申告書を作成する場合には、何日もつぶすことになりますので、平日の昼間に動けるということが必須となります。

 

次に、相続税は所得税など毎年計算する税目と異なり、一生に1回や2回程度しか身近に感じる機会はありません。また、他の税金に比べて計算が非常にややこしいです。したがって、ある程度相続税の基礎知識がないと正確な申告書は作れません。

 

亡くなってから10ヶ月というのは長いようであっという間です。自分でやろうとしている人は、相続が発生する前から相続税の勉強をしておきましょう。

 

最後に、相続税はあくまで税金のため数字が必ず絡んできます。したがって、数字が苦手な人はやめておいたほうがいいでしょう。

 

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