大河ドラマ『青天を衝け』で再び脚光を浴びる渋沢栄一。2024年には新1万円札の「顔」になることも決定し、注目度は増す一方だ。そこで本記事では奥野宣之氏編訳の書籍「抄訳 渋沢栄一『至誠と努力』人生と仕事、そして富についての私の考え」(実業之日本社)より一部を抜粋し、渋沢栄一が実際に記した金銭論を紹介していく。
「悪いカネは悪い結果をもたらす」渋沢栄一が説く「正しい富」とは? ※画像はイメージです/PIXTA

「それぞれ職業が違っていても、みんな同じ人間」と忘れるな

■社会は「助け合い」

 

人が世の中でやっていくとき、孤立していては生きていけない。言い換えれば「助け合い」が必要だ。

 

どれだけ頭がよくて、さらに人生に必要な能力を持っていようと、助け合いができなければその真価を完全に発揮することはできない。

 

多数の人々の集まりである国家社会の幸福・利益は、その助け合いの力によって初めて得られる。つまり、みんなが助け合って国家社会の幸福・利益を求めるということは、同時に個々人の幸福・利益を保護することを意味する。

 

人間は自分一人の力だけでは、じゅうぶんな幸福を手に入れることはできない。真の幸福は社会のおかげで得られるものなのだ。

 

■人間は人間らしく

 

公務員だろうが農家だろうが、商売人、技術者、教師だろうが、何の道を選ぶにしろ、その心がけは同じでなければならない。

 

「商売人だからちょっとは嘘を言ってもいい」「技術者だから多少は除外される」なんてことはないのだ。

 

それぞれ職業が違っていても、みんな同じ人間であり、生きていく社会もまた同じ。月にでも行かない限り別世界はないはずなのだ。つまり「人間として、人間らしい道を歩んでいく」。これこそが世の中で生きていく上で、もっとも大切なことだ。

 

 

渋沢 栄一

編訳:奥野 宣之