(※写真はイメージです/PIXTA)

医者のこどもは可哀想、裕福、継ぐのが当然。本やドラマの世界で様々な描かれ方をする彼ら。実際は、医者である親たちにどのような思いを抱いているのだろうか。今回は、歯医者一家に生まれた一人の女性に、歯医者だからこその両親の苦悩を語ってもらった。

「完璧主義」の父と「院長の奥さん」をこなす母

父と母が喧嘩をする原因はもちろん夫婦だからというだけではありません。父はいわゆる職人肌で、仕事で決して手を抜かない完璧主義。患者さんに対して一度でもミスをすることは当然許されないし、責任はすべて院長である自分に降りかかってきます。そのため技術面にも厳しく、患者さんの前でも衛生士にビシバシ指導していました。

 

一方、母は衛生士であると同時に院長の「奥さん」としての役割もこなす必要があります。他の衛生士さんや患者さんが気持ちよく病院で過ごせる雰囲気作りをすることも母の大きな務めでした。そのため父の言葉足らずな部分に対し、フォローに回ることも多々あったようです。

 

それが開業する父と母の苦労です。

歯医者としての父母と「お父さんお母さん」

そんな父と母でしたが、家に帰るときちんと「お父さんとお母さん」をしてくれました。休みの日には必ずお出かけをし、長期休暇の度に旅行に連れて行ってもらいました。大変さを表に出さず、愛情たっぷりで育ててもらったなと、とても感謝しています。

 

当然、共働きだったので学校から帰っても父と母が家にいることはほとんどありませんでしたが、ペットの犬と猫もいたし、習い事も数えきれないほどさせてもらっていたので寂しさを感じたことなど一度もありませんでした。相当恵まれていたのだと思います。

 

だからこそ、子どもの頃は、父と母の苦労に気付くことはできませんでした。

「継がなくていい、こんな大変な思いはしなくていい」

中学校の頃でした。

 

私の友達が、将来は寿司屋である父の仕事を継ぐのだと言っているのを聞きました。そうしたいとかじゃなくて生まれた時から決まっているのだと話していました。なんだかカッコいい!と思うと同時に、ふと、私は歯医者を継がなくていいのだろうかと思いました。

 

家に帰り早速その日の夜、父に聞いてみると、

 

「絶対にやめときなさい、こんな大変な思いはしなくていい」と言われました。それは母も同様です。

 

なんでも「好きにしたらいいよ」という両親が、食い気味に、そして真剣に「継がなくていい」と言ったその言葉は、なんだか重く、それ以来、このことを口にすることはなくなりました。

 

何がどう大変なのかその時は分かろうともしていなかったけど、結婚してから母に開業からの暮らしを聞いて、納得しました。

 

子どもに味あわせたくないほどの苦労だったということでしょう。

「継がなくていい」父と母の娘への思い

父と母の元を離れて暮らすようになって約10年。私も結婚し、現在妊娠中です。

 

当時の父と母と同じくらいの年齢になりましたが、「継がなくていい」というあの言葉のおかげで、開業当時の父と母のような苦労はしていません。もし機会があっても、私には絶対できないと思っていますし、自分の子どもにもそこまでの苦労はさせたくないと、あの時の父と母と同じように思います。

 

そんな苦労の中、姉と私を何不自由なく育て、開業医として成功した父と母を心の底から尊敬しています。

 

私は、歯医者の娘だからこそ見えた両親の苦悩と愛情を、今後も一生忘れることはないでしょう。

 

 

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