受験生の面接で適性判断する医学部医学科入試
実は受験生は、“患者を救う”という強い志望動機を、“他人”に説明できるまでしっかり自分の中に落とし込む必要に迫られている。
医学部医学科は、国立42校、公立8校、私立31校、文部科学省所管外1校にあるが、現在、全大学の入試に面接が組み込まれている。学校推薦型選抜(旧・推薦入試)、総合型選抜(旧・AO入試)のみならず一般選抜(一般入試)でも受験生全員に面接を課すのは医学部だけだ(※2020年・2021年度入試は名古屋大学がコロナ禍で面接中止)。
面接のねらいは、インフォームド・コンセントやセカンドオピニオンが一般化し患者との信頼関係が重要視されるなかで、学力試験では測れない患者とよき関係を築くことのできる臨床医としての適性を見抜くことにある。そこでは医師になりたいという「強い意志」、医師に不可欠な「コミュニケーション能力」などが測られる。
面接形式は実にさまざまで、個人面接が主流であるものの、大学によっては集団面接、集団討論、MMI(マルチプル・ミニ・インタビュー、課題として出された状況に置かれた時に、どのように対応するか、どのように考えるかを規定の時間内に面接官に説明する)を課すところある。
21年度も、受験生同士や試験官と密にならないように配慮しながら、ほぼすべての大学で予定通り面接が実施された。大学は筆記試験同様、面接試験のためにも周到な準備をして臨む。採点基準のすり合わせはもちろんのこと、試験官ごとに評価基準が変わらぬように綿密な打ち合わせがなされる。面接官は皆、医師の先輩である大学の教師たち。そうやって未来の同僚たちを選んでいくのだ。
受験生には、「志願者はまだ若くこれからたくさんの人生経験を重ねていくことを面接官たちは心得ている。みているのは潜在の能力であり、医師としての伸びしろ」と複数の私立大の医学部長が口にしていたことを付記しておきたい。
大熊 文子
フリーライター