「自慢をする」「共感する」など、営業の雑談にはさまざまなテクニックがあります。野村證券でYouTuberの宋世羅(そんせら)氏の著書『ヨイショする営業マンは全員アホ 1%だけが知っている禁断の法則』(飛鳥新社)より一部抜粋・編集して、テクニックよりも大切な「タイミング」と「目的」をもった雑談をするための方法を紹介します。
なぜ保険業界の営業マンは「聞いてもいない自慢をする人」が多いのか (写真はイメージです/PIXTA)

笑わせるのが難しそうなお客様には「先生、教えてください」のパターン

ただし、中には雰囲気的に笑わせるのが難しそうなお客様ももちろんいます。これは全然無理だなと、こうなった時にどうやって距離を縮めに行くかと言うと、共通の話題で仲よくなるというやり方があります。

 

これは、営業本やしょうもないセミナーでも言われてることですが、実際の現場でもめっちゃ効きます。共通の話題で盛り上がると、確実に距離が縮まるんですね。なので、笑わせることができなそうなら、共通の話題を探しにいきましょう。

 

とはいえ、この共通の話題すら見つからないという場合もあると思います。たとえば、男性でバリバリ体育会営業マンの私とは真逆の女性のお客様が目の前に座っていて、共通の話題が何もない。さらに、笑わせる雰囲気でもないというような状況で、最後にやる手段が「先生、教えてください」パターンです。

 

たとえば、その私と真逆のお客様の職業がネイリストだとしましょう。なおさら自分の専門外で、全然分かりません。そんな時に使えるのが「あれって実際どうなんですか?」という、先生教えてくださいパターンなんです。

 

要するに、相手の土俵であるネイルを題材に雑談をしに行くわけですが、ここにもまた営業マンのセンスが出てきます。

 

センスがない営業マンは、「実際、両手ネイルしたらどれくらいかかるんですか?」みたいなことを、聞いてしまう。美容に興味がなさそうなバリバリ男性の私みたいな営業マンがそれを言うと、お客様は「全然興味ないくせに、無理やり近寄ろうとして話しかけてきているな」と感じてしまうはずです。

 

では、どう聞けばいいかというと、たとえば、

 

「やっばり美容系のお仕事をしている方って、私のような営業マンと対面した時にも、相手の爪や髭を気にして見られたりするものなんですか?」

 

というように、専門外の美容のことを聞いているんだけども、本当に自分が知りたくて聞いていそうなことを質問するんです。

 

教えてくださいパターンは、無理やり感やウソっぽさが出ちゃうとまずい。なので、一見興味がなさそうな相手に寄った題材であっても、自分にとって本当に興味のあることを聞くことがポイントです。

自慢話は、必ず自虐ネタの後に

先ほど、雑談の目的を意識しろと言いました。一つ目の目的はここまでご説明してきた「お客様と打ち解ける」ということですが、二つ目が「営業マンの権威性を上げる」というものです。

 

お客様と趣味の雑談で盛り上がって話しやすくなるのはもちろんいいことなのですが、それだけで終わってしまっている営業マンが多いと思います。でも、それはもったいない。できれば、この雑談中に営業マンの権威性を上げることを狙いに行きましょうというのが、二つ目の目的です。

 

どういうことかというと、雑談中にお客様に「この営業マン、優秀かもしれない」とか「この営業マン、ちょっと普通と違うな」というイメージをつけてしまうのです。どうすればそれができるのか。結論から言うと「いやらしくない程度に、自虐ネタの最中に自慢を入れる」という方法があります。

 

たとえば、先ほどのプテラノドンのくだりで言うと、「私は女性のお客様からプテラノドンに似てるとよく笑われるんですが、その割に女性のお客様は結構満足して保険加入していただけるんですよ」みたいな感じに言うんですね。

 

これ、「プテラノドンみたいな見た目をして笑われる」という自虐ネタの後に、「満足して入っていただけるお客様が多い」という自慢を入れています。

 

私が言いたいのは、自慢をする時は最低でも必ず自虐ネタの後にしましょうということ。今、自虐ネタを入れずに自慢ばかりする営業マンが、大量発生してるんですよね。特に保険業界には「俺、トップセールスだから」「会社でこれだけ成績を出していて」みたいな、お客様が聞いてないような自慢をごちゃごちゃ言う奴がたくさんいます。

 

たしかに、言ったもん勝ちという側面も、あるっちゃあります。そんなに営業マンと接していないお客様からすると、「この人はトップセールスマンなんだ」と真に受けて、それだけですごいと思ってしまうことも現実問題としてはあります。

 

ですが、私の印象だと、この「言ったもん勝ちブランディング」はもう5万年前にはすでに終わっていて、今はなかなか通用しないという感覚があります。なので、もし自慢するのであれば、必ず自虐ネタを言ってから。

 

もしくは、少しでもいやらしさが伝わりそうなリスクや危険性があるのであれば、別に雑談でイキる必要はないので、権威性を上げること自体を放棄してしまっても構いません。

 

 

宋 世羅

元野村證券YouTuber