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農地は面積が広いため、相続税や贈与税が課税されると税額が高くなってしまいますが、納税のために農地を処分すると、後継者が農業を続けられなくなるという弊害があります。そこで、後継者が農業を続ける場合や一定の条件のもとで農地を貸し出す場合は、農地にかかる相続税や贈与税を猶予する特例が設けられています。今回は農地の納税猶予の特例について徹底解説します。

農地の贈与税の納税猶予の特例

生前に後継者を定めて農地を一括贈与する場合には、贈与税の納税猶予の特例が適用できます。農地の贈与にかかる贈与税は、贈与者が亡くなるまで納税が全額猶予されます。

 

■贈与税の納税猶予の特例を適用するための要件

贈与税の納税猶予の特例を適用するためには、贈与者、受贈者(贈与される人)、贈与の方法のそれぞれに要件があります。

 

[贈与者の要件]

●農地を贈与した日まで3年以上継続して農業を行っていた

●過去に相続時精算課税を適用した農地の贈与をしたことがない

●対象年に、今回の農地等以外に農地等の贈与を行っていない

●過去に、農地等の贈与税の納税猶予の適用を受けることができる一括贈与をしたことがない

 

[受贈者の要件]

●贈与者が死亡したときに相続人になる人(推定相続人)の中の一人

●一定の要件を満たして農業の担い手になることを農業委員会に証明された人

 

[贈与の要件]

下記のいずれかの農地等を、推定相続人のうちの1人である農業後継者に一括して贈与することと定められています。

 

●農地の全部

●採草放牧地の3分の2以上

●準農地の3分の2以上

 

■贈与税の納税猶予の特例を適用するための手続き

贈与税の納税猶予の特例を適用するときは、贈与された年の翌年の2月1日から3月15日までに、贈与税の申告書を提出します。このとき、納税猶予額と利子税に見合った担保を提供しなければなりません。

 

手続きには次のような添付書類が必要です。

 

●農地等の贈与税の納税猶予税額の計算書

●農地等の贈与に関する確認書

●農業委員会による「贈与税の納税猶予に関する適格者証明書」

●贈与契約書など贈与の事実を証明するもの

●贈与された農地が三大都市圏(首都圏、近畿圏、中部圏)の特定市(区)にある場合は市(区)長の証明書

●贈与された農地が準農地である場合は市区町村長の証明書

●担保として提供する財産の明細書およびその他担保の提供に関する書類

 

■3年ごとに継続届出書の提出が必要

贈与税の納税猶予の特例を適用したときは、3年ごとに次の書類を税務署に提出して、継続の届け出をしなければなりません。

 

●贈与税の納税猶予の継続届出書

●農業(または貸付け)を引き続き行っていることを証明する農業委員会の証明書

●特例農地等の異動明細書

●特例農地等に係る農業経営(または貸付け)に関する明細書

 

継続の届出をしなければ納税の猶予が取り消され、猶予されていた贈与税と利子税を納めなければなりません。

 

■贈与者・受贈者のどちらかの死亡で納税は免除される

贈与税の納税猶予の特例では、贈与者・受贈者のどちらかが亡くなった場合には猶予されていた税額が免除され、贈与税を納めなくてもよくなります。

 

贈与者が死亡したときは、農地を相続したとみなして、相続税の納税猶予の特例を適用することができます。

 

■農業をやめれば納税しなければならない

次のような場合は納税の猶予が取り消され、猶予されていた贈与税と利子税を納めなければなりません。

 

●贈与された農地を譲渡、貸付、転用、耕作放棄した場合(特定貸付・営農困難時貸付は除く)

●農業をやめた場合

●受贈者が贈与者の推定相続人でなくなった場合

●継続届出書を提出しなかった場合

●生産緑地について買取の申出があった場合

●特定生産緑地の指定の解除があった場合

●都市計画の変更等により特例農地等が特定市街化区域農地等に該当することとなった場合

●その他一定の場合

 

※譲渡、貸付、転用、耕作放棄した農地の面積が全体の20%を超える場合は、猶予されていた贈与税の全額を、20%以下であれば猶予されていた贈与税の一部を納めなければなりません。

 

これら以外にも要件や例外措置が規定されていますが、ここでの説明は省略します。

農地の相続税の納税猶予の特例

農地の贈与税の納税猶予を受けていて贈与者が亡くなった場合は、贈与された土地は相続したとみなされ相続税の課税対象になりますが、適用要件を満たせば相続税の納税猶予の特例を適用することができます。

 

また、農地の贈与税の納税猶予を受けていなくても、農地を相続して農業を引き継げば相続税の納税猶予の特例を適用することができます。

 

■相続税の納税猶予の特例を適用するための要件

相続税の納税猶予の特例を適用するためには、被相続人、相続人、農地のそれぞれに要件があります。

 

[被相続人の要件]

被相続人は、次のいずれかの要件を満たしている必要があります。

 

●死亡の日まで農業を行っていた

●生前に農地を一括贈与した

●死亡の日まで営農困難時貸付※1や特定貸付※2を行っていた

 

※1営農困難時貸付とは、障害・疾病などにより農業を続けることが困難となった場合に、その農地等を他人に貸し付けることをいいます。

※2特定貸付とは、市街化区域外の農地を農業経営基盤強化促進法等の規定に基づく事業により貸し付けることをいいます。

 

[相続人の要件]

相続人は、次のいずれかの要件を満たしている必要があります。

 

●相続税の申告期限までに農業を引き継ぎ、その後も継続する

●農地等を生前一括贈与されて贈与税の納税猶予の特例を適用していた

●相続税の申告期限までに特定貸付を行った

●その他一定の事項

 

[特例の対象となる農地]

特例の対象となる農地は、被相続人が農業を行っていたか特定貸付を行っていた農地で、次のいずれかに当てはまるものです。

 

●相続税の申告期限までに遺産分割されている農地

●贈与税の納税猶予の特例を適用していた農地

●相続があった年に被相続人から生前一括贈与を受けていた農地

 

[特例が適用できない農地]

農地が三大都市圏(首都圏、近畿圏、中部圏)の特定市(区)の市街化区域内にあって生産緑地地区内又は田園住居地域内でない場合は適用できません。また、生産緑地地区内であっても、「買取の申出がされたもの」、「特定生産緑地の指定(及び指定の延長)がされなかったもの」、「特定生産緑地の指定が解除されたもの」については、適用できません。

 

図示すると以下の通りです。

 

[図表]農地の納税猶予の対象となるものとならないもの

 

また、相続時精算課税制度を適用して贈与された農地についても適用できません。

 

■相続税の納税猶予の特例を適用するための手続き

相続税の納税猶予の特例を適用するときは、被相続人の死亡の翌日から10ヵ月以内に、相続税の申告書を提出します。このとき、納税猶予額と利子税に見合った担保を提供しなければなりません。

 

手続きには次のような添付書類が必要です。

 

●農業委員会による「相続税の納税猶予に関する適格者証明書」

●特定貸付を行っている場合は「相続税の納税猶予の特定貸付に関する届出書」

●担保として提供する財産の明細書およびその他担保の提供に関する書類

 

■3年ごとに継続届出書の提出が必要

相続税の納税猶予の特例を適用したときは、3年ごとに次の書類を税務署に提出して、継続の届け出をしなければなりません。

 

●相続税の納税猶予の継続届出書

●農業(または貸付)を引き続き行っていることを証明する農業委員会の証明書

●特例農地等の異動明細書

●特例農地等に係る農業経営(または貸付)に関する明細書

 

継続の届出をしなければ納税の猶予が取り消され、猶予されていた相続税と利子税を納めなければなりません。

 

■相続人が死亡すれば納税は免除される

農地の納税猶予の特例では、次の場合に猶予されていた税額が免除され、相続税を納めなくてもよくなります。

 

●農地を相続した相続人が死亡したとき

●三大都市圏特定市以外の市街化区域内の農地(生産緑地を除く)については、農地を相続した相続人が20年間農業を継続したとき

●農地を相続した相続人が後継者に生前一括贈与したとき

 

農地を相続した相続人が後継者に生前一括贈与したときは、その後継者が贈与税の納税猶予を受けることができます。

 

■農業をやめれば納税しなければならない

次のような場合は納税の猶予が取り消され、猶予されていた相続税と利子税を納めなければなりません。

 

  • 相続した農地を譲渡、貸付、転用、耕作放棄した場合(特定貸付・営農困難時貸付などの一定の貸付は除く)
  • 農業をやめた場合
  • 継続届出書を提出しなかった場合
  • 生産緑地について買取の申出があった場合
  • 特定生産緑地の指定の解除があった場合
  • 都市計画の変更等により特例農地等が特定市街化区域農地等に該当することとなった場合

 

※譲渡、貸付、転用、耕作放棄した農地の面積が全体の20%を超える場合は、猶予されていた相続税の全額を、20%以下であれば猶予されていた相続税の一部を納めなければなりません。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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