※画像はイメージです/PIXTA

農地は面積が広いため、相続税や贈与税が課税されると税額が高くなってしまいますが、納税のために農地を処分すると、後継者が農業を続けられなくなるという弊害があります。そこで、後継者が農業を続ける場合や一定の条件のもとで農地を貸し出す場合は、農地にかかる相続税や贈与税を猶予する特例が設けられています。今回は農地の納税猶予の特例について徹底解説します。

農地の納税猶予の特例の概要

農地の納税猶予の特例は、農地を相続したまたは贈与された後継者に対して、農地にかかる相続税または贈与税の納税を猶予する制度です。この特例の適用は、後継者が農業を続けることや農業を行う人に農地を貸し出すことが条件になります。

 

■「納税猶予」だが納税は事実上免除される

はじめにお伝えしたいのが、「納税猶予」という言葉の意味です。

 

猶予というと税金を納めるのが先延ばしになるだけのイメージがあると思いますが、実際には「納税免除」と同じ意味と考えていただいて問題ありません。最初に納税猶予を受けることができれば、そのまま納税免除となることが通常です。

 

納税猶予を考える上では、

 

1.最初の申告で納税猶予を受ける要件に該当すること

2.納税猶予が取り消される要件に該当しないこと

 

の二点が重要になります。このあとそれぞれの要件について解説しますので、注意してください。

 

また贈与税の納税猶予はその納めるべき贈与税の全額が猶予されますが、相続税の納税猶予は納めるべき相続税の全額が猶予されるわけではありません。

 

相続税で納税が猶予される税額は、通常の方法で計算した本来の相続税と農業投資価格に基づいて計算した相続税の差額です。農業投資価格とは、農業に使用されることを前提にした売買価格として国税局が定めたもので、通常の宅地評価額よりも低く設定されています。

 

 

■贈与税と相続税をトータルして軽減

農地の納税猶予には、贈与税に対する特例と相続税に対する特例がありますが、これらの特例は次のような考えのもとで一体の制度になっています。

 

1.基本として相続税の納税猶予の特例がある。

2.農地の次世代への早期移転を促進するため贈与税の納税猶予の特例がある。

3.実際に相続が起こることにより、贈与税の納税猶予が解消され相続税の納税猶予が開始する

 

※厳密には相続税の納税猶予は自動的に開始するわけではなく、改めて相続税の納税猶予について要件を満たしているかどうかを判定し、満たしている場合に適用が可能となりますが、通常はそのまま継続されることが一般的です。

 

相続税の納税猶予の特例は、後継者の農業経営を保護育成する目的から、一定額(農業投資価格に基づいて計算した税額)以外の部分について納税を猶予・免除しています。

 

さらに、農地の次世代への早期移転を促す目的から、贈与税についても納税猶予の特例が定められています。

 

農地の贈与者が死亡したときは、贈与税の納税は免除され、引き続き相続税の納税猶予の特例の対象になります

 

※厳密には相続税の納税猶予は自動的に開始するわけではなく、改めて納税猶予について要件を満たしているかどうかを判定し、満たしている場合に適用が可能となりますが、通常はそのまま継続されることが一般的です。

 

制度を一体のものにすることで、農地を相続で引き継いだか生前贈与で引き継いだかにかかわらず、納税の猶予・免除が受けられることになります。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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