大河ドラマ『青天を衝け』。放送開始以降、高視聴率を維持し、俳優陣の名演が報じられるなど、世間の注目は高まる一方だ。本記事では奥野宣之氏編訳の書籍「抄訳 渋沢栄一『至誠と努力』人生と仕事、そして富についての私の考え」(実業之日本社)より一部を抜粋し、吉沢亮演じる主人公・渋沢栄一が実際に記した金銭論を紹介していく。
日本経済の父・渋沢栄一が語った「富を増やすため」重視すべきこと ※画像はイメージです/PIXTA

渋沢栄一が語る「富」「公益」「欲望」の関係

■基本は公益性

 

富を築くための方法や手段は、第一に公益を旨としなければならない。人を虐(しいた)げるとか、害を与える、欺(あざむ)く、あるいは嘘をつくといったことがあってはならない。

 

そうして各自が、その事業に従って頭脳と心を尽くし、道理に外れないようにしながら富を増していく。これならば、どれだけ社会が発展していっても、互いに奪い合ったり、足を引っぱり合ったり、といったことは起こらないだろう。

 

真正な富はこうして初めて得られるものであり、継続できるものである。

 

■欲望と安心

 

どうしても人が生きていくには、「欲望」がなくてはならない。

 

つまり、人がイキイキしているとか、栄達を望むとかいうのは、いわゆる「欲望の表れ」であって、それにより、はじめて向上心というものが生まれる。いつの時代も、そうやって人は成長し、世の中は進化を遂げてきた。《略》

 

欲望は立身出世するために必要なものだ。しかし、それが行き過ぎて生じる過ちは、しばしばたいへん人を害し、世の災いとなってしまう。

 

だから、一方で自らの欲望を縛るルールを決めて、各々がその拠り所を明らかにしておくのだ。

 

そして、世の中で欲望を遂げて、さらなる向上をめざすときにも、決してルールからはみ出さないように常に修養していく――。そうすれば、自然と安心立命の境地に到達できるだろう。

 

 

渋沢 栄一

編訳:奥野 宣之