●一部上場の3月期決算企業のうち、この2週間で全体の9割近い企業が、決算を発表する予定。
●今回の決算の焦点は業績予想の上方修正度合いと進捗率、ただ、いずれも考慮すべき点がある。
●業績予想は、企業も市場もまだ引き上げにくい環境、物色の対象銘柄はかなり絞られる見通しに。
一部上場の3月期決算企業のうち、この2週間で全体の9割近い企業が、決算を発表する予定
日本では、今週から3月期決算企業による2021年4-6月期の決算発表が本格化します。東京証券取引所が公表している資料によると、市場第一部上場の3月期決算企業のうち、今週は546社、来週は759社が、決算発表を予定しています(7月15日時点)。これらの社数は、それぞれ全体の37.0%、51.4%に相当し、決算発表はこの2週間に集中することになります。
なお、5月19日時点で、企業自身による2021年度の業績予想は、売上高が前年度比6.5%増、営業利益は同27.1%増、経常利益は同19.5%増、純利益は同27.4%増でした(図表1、金融とソフトバンクグループを除く)。
業績の回復傾向が続くという見方が示されたものの、市場では期待したほどではなかったとの受け止めが多く、その後の日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)は、上値の重い展開が続きました。
今回の決算の焦点は業績予想の上方修正度合いと進捗率、ただ、いずれも考慮すべき点がある
そのため、今回の決算では、2021年度の業績予想が、どの程度、上方修正されるかが、1つの焦点となります。しかしながら、今回は4-6月期という、まだ新年度入り後、間もない時期の決算発表であることや、新型コロナウイルスの新規感染者数が、国内外で再び増加傾向にあることを踏まえると、業績予想を引き上げる企業は、それほど多くないように思われます。
そこで、もう1つ焦点となるのは「進捗率」です。進捗率とは、業績予想の達成度合いを示すもので、一般に、売上高や純利益などの四半期累計値を、企業の通年度の業績予想で割って求めます。4-6月期の場合、進捗率は25%が目安となり、この水準を大きく超えれば、将来、業績予想が上方修正される可能性が高まります。ただ、企業によって、売り上げの伸びる時期が異なる場合もあり、過去数年の平均値もみておく必要があります。
業績予想は、企業も市場もまだ引き上げにくい環境、物色の対象銘柄はかなり絞られる見通しに
なお、日経平均株価について、今年度の予想1株あたり利益(EPS)と株価収益率(PER)は、7月21日時点で、それぞれ2,046円66銭、13.46倍でした。今年度の予想EPSは、前年度から29.3%増の水準ですので、仮にこれが40.9%増となり、PERが13.46倍のままであれば、日経平均株価は30,000円を回復します(図表2)。
40.9%増という水準は、それほど遠い訳でありませんが、ここまでの上方修正には、まだ時間がかかると思われます。
その理由は以下の通りです。すなわち、国内でオリンピック・パラリンピックが開催されるなか、感染状況や業績への影響を見極めたいとする企業や市場関係者も多く、オリンピック・パラリンピックが終了し、感染状況が明らかになるまで、業績予想は引き上げにくいと考えられるためです。この点を踏まえると、今回の決算で物色の対象となるのは、かなり強い決算内容を示した銘柄に絞られる公算が大きいとみています。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年4-6月期決算のチェックポイント』を参照)。
(2021年7月26日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト