ケアマネは介護者の苦労を知っている
その後、父は急激に衰えが進み、入院することになったので、それ以上の事態にはなりませんでしたが、あのまま介護をつづけていたら、もしかすると虐待までいっていたかもしれません。暴言・虐待の事例を数多く見ているケアマネの土屋さんはいいます。
「私が担当した女性の利用者さんの娘さんに、会話から親思いであることが伝わってくる方がいました。介護も献身的にやっておられて、お母さんも幸せだなと思っていたんです。ところが、その方が虐待をするようになった。そういうケースは多いですよ。虐待は特別なことではない。誰でもしてしまう可能性はあるんです」
認知症の症状もさまざまです。攻撃的になって、虐待を受けるのとは逆のパターン、つまり介護される人が介護する人に暴力を振るうケースもあります。これもまた、介護をする人にとっては大きなショックとなります。
また、徘徊する人は、行方不明になったり事故に遭ったりする心配がありますし、知らない家に入りこんだりして迷惑をかけないかといった不安もあります。介護される人に認知症が加わると心労は倍増するといえます。
ただ、認知症の種類にもよりますが、進行を遅らせるのに効果がある薬もありますし、症状を改善に向かわせるさまざまな非薬物療法も高齢者施設などで行なわれています。ケアマネはそうした情報をもっていますから、相談してみるのもいいでしょう。
それに、何よりケアマネは、親の認知症状に悩む介護者の事例をたくさん見ていますから、折れそうになる介護者の気持ちを支える方法論をもっています。そこで的確なアドバイスができるかどうかでケアマネの良否が分かれるわけですが、まずは相談してみるのが先決なのです。
※本連載に登場するケアマネの方々、サービス事業者の方々のお名前は、すべて仮名です。
相沢 光一
フリーライター