音楽を介した遊びを楽しむうちに「感性」が磨かれる
筆者の音楽教室には、ピアノやヴァイオリンをはじめ、ソルフェージュ、作曲、声楽・ボイストレーニング、チェロ、フルート、クラシックギター、絶対音感など、さまざまなクラスがあります。
そのなかでも「幼児リトミック=ソルフェージュ」のレッスンは、生後3〜4ヵ月くらいの首の据わったお子さんから参加しています。これは子どもたちが音楽と能動的に関わる最初の接点になります。
レッスンでは、季節に合わせた音楽を扱ったり、自然の風物や食べ物などの身近なものと関連させたりしていきます。それに合わせて、子どもたちは体を使って自分なりの表現をします。
最初は物怖じして、みんなの前では自分を表現できない子も、音楽の力に後押しされるように、自分の表現ができるようになっていきます。
レッスンを受け始めたばかりのときにはお母さんの陰に隠れるようにしていた子が、徐々に音楽に合わせて体を動かすようになり、やがて体を目一杯使って、人前でものびのびと自分を表現できるようになっていく姿を数え切れないほど見てきました。
こうして音楽を介した「遊び」を楽しんでいるうちに、子どもたちの感性は自然に磨かれていきます。
リトミックを経験した子どもたちは、成長していくにしたがってピアノやヴァイオリンなどの楽器にも興味をもち、学び始めるようになります。例えば、小学校高学年くらいになったお子さんが、ドビュッシーの曲に挑戦することになったとしましょう。
ドビュッシーはフランスの作曲家です。彼の作曲した『月の光』や『亜麻色の髪の乙女』などはCMなどにもよく使われるので、多くの人が耳にしたことがあるのではないでしょうか。彼はその作曲技法から「印象主義音楽(印象派)」と呼ばれています。
そのドビュッシーの楽曲を指導する際、講師は技術面へのアドバイスはもちろんのこと、子どもの感性を刺激するような、こんな指導もします。
「印象派のモネの絵を見たことはある? モネの『睡蓮』をイメージして弾いてみよう」
音楽を通して感性を磨いてきた子どもたちは、「音楽」や「美術」というジャンルを軽々と超えて、絵画の印象を自分のなかで消化し、それを音楽を通して表現するということができるようになっています。
感性を研ぎ澄まし、創造性豊かなアウトプットをするということは、人工知能にはできないことであり、人間であっても、一朝一夕には身につけることのできない力です。音楽教育によって磨かれた感性は、これからの時代をAIと共存しながら生きる子どもたちにとって、かけがえのない財産になるといえるでしょう。
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