「オンライン診療は儲からない」という先入観こそクリニックが「儲からない原因」…導入すればこれだけ変わる

コロナ禍により「オンライン診療」のニーズが高まっていますが、本格的に導入しているクリニックは多くありません。誤診リスクは高く、導入のために費用も手間もかかるのに、診療報酬は安い…。多くの開業医は、オンライン診療では儲からないと考えているようです。しかしオンライン診療の導入こそ、クリニックの経営状況を改善する切り札になり得ることをご存じでしょうか。実際に導入した医師が解説します。

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「適正な人件費」と「サービスの質」のジレンマ

オンライン診療の大きなメリットは、受診控え患者を呼び戻したり、他院の患者を奪ったりできることです。

 

しかし、ほかにもオンライン診療のメリットはあります。その一つが、人件費問題を解決できる点です。

 

厚生労働省の「令和元年社会医療診療行為別統計の概況」によると、診療所の2019年6月分診療報酬明細書・調剤報酬明細書の総数は6207万件でした。これに対して診療所の施設数は8万809ヵ所ですから、6207万÷8万809≒770、すなわち、クリニックの1ヵ月あたり診察患者数は約770人ということになります。

 

1ヵ月の稼働日数を20日とみると、1日あたりの患者数は40人弱。患者一人あたり単価を5000円とすれば、平均的なクリニックは1日あたり20万円弱、1ヵ月あたり400万円弱の収入を得ている計算になります。

 

一方、平均的なクリニックの場合、医師が1人、看護師が2人、事務スタッフが2人というケースが多いのではないかと思います。仮に、看護師3人と事務スタッフ3人という体制で、看護師に月30万円、事務スタッフに月20万円の給与を支払っている場合、人件費の総額は30万円×2人+20万円×2人=100万円となります。

 

一般に、クリニックで適正な人件費は、総収入の15~20%程度だといわれます。つまり、1ヵ月に400万円弱の収入を得ているクリニックでは、人件費を60万~80万円弱以下に抑えなければならないわけです。

 

つまり、前述の「看護師2人+事務スタッフ2人」という体制は、かなり苦しいラインなのです。

 

人件費は、クリニック経営において常に悩みの種です。看護師や事務スタッフの人数を減らして人件費を抑制しようとすると、とたんにサービスの質が下がり、来院患者数の減少につながる危険性があります。

 

また、一人あたりの給与額を下げると、優秀な人から退職してしまい、これもサービスの質を下げます。また、退職者を出して新規採用をする場合、求人広告など余計な費用が必要になりますし、面接などの採用活動や教育などの手間もかかります。

 

ですから、人件費を削減するのはかなり難しい問題なのです。

看護師不足で給与高騰…人件費問題はさらに深刻化

さらに、昨今の看護師不足問題が、クリニックに重くのしかかっています。

 

高齢化が進むなか、日本では看護ニーズが増える一方です。医療機関はもちろん、介護施設や在宅・訪問看護などの分野でも看護師の採用数が右肩上がりになっているからです。看護師の人数自体は1年あたり3万人程度のペースで増えているのですが、看護ニーズが爆発的に増えているため、供給が追いついていません。

 

厚生労働省の「長期的看護職員需給見通しの推計」によれば、2025年時点で3.4万~45.3万人の看護師不足に陥ると予測されています。

 

こうしたなか、看護師の給与は高騰していくと考えられます。もともと看護師は、仕事のきつさに比べて給与額が低いとみられていました。そこに新型コロナウイルスの感染拡大が起こり、看護師はさらにリスクの高い仕事になったのです。今後は、高い給料を払わなければ看護師が確保できない可能性が高いでしょう。特に、僻地のクリニックでは看護師不足が深刻化するはずです。

オンライン診療で「人件費削減」と「質の維持」を両立

私の院の診療体制は、医師は私1人、看護師が7人、事務スタッフが5人です。一般的なクリニックに比べると、看護師・事務スタッフともに人数は多いのですが、私が1日で診る患者数は200人であることと、患者1人あたりの診療時間を最大限に短くしながら質の高い医療を提供するためには、これだけの人員が必要なのです。

 

ところが、私がオンライン診療をする際はもっと少人数でこなすことが可能です。オンライン診療では検査や注射などが発生しませんから、私をサポートする看護師が不要になり、問診担当の看護師だけ用意しておけばいいのです。

 

また、事務スタッフも少人数制で対応できます。患者が予約を入れるときはオンライン診療システム上で操作を完了できるため、事務スタッフが電話予約を受けて調整作業をする必要がなくなります。

 

加えて、診察後の支払い業務も医療事務担当者がわざわざ計算したりせず、システム任せにできるのです。その分、管理の手間が小さくなって人件費を安く済ませることが可能です。

 

例えば、ある1日の午前中はオンライン診療の時間とし、午後に外来診療を行うことにします。

 

すると、午前中の看護師は最小限の人数で済むでしょうし、事務スタッフはいなくても大丈夫かもしれません。

 

その場合、人件費は大幅削減が可能です。前述した事例の「看護師3人+事務スタッフ3人」というクリニックで、午前中のみ看護師1人+事務スタッフ0人でのオンライン診療に切り替えた場合、人件費は「30万円×1人(常勤看護師)+20万円×2人(午後診療のみ担当するパート看護師)+12万円×3人(午後診療のみ担当するパート事務スタッフ)=106万円となります。外来診療だけを行っていたときは月150万円かかっていた人件費が、3割も削減できることになります。

診療報酬は安いが「固定費」の削減効果は絶大

人件費と並んで固定費のなかで大きな割合を占める賃料も、オンライン診療の導入によって削減が可能かもしれません。

 

もちろん、医療法ではオンライン診療のみで外来診療をいっさい行わないことを禁じていますから、リアルなクリニックを廃止することは不可能です。

 

ただ、オンライン診療の比率を大きくするなら、患者の待合室やスタッフの執務スペースなどを従来に比べて狭くすることができます。その分、クリニックや駐車場の賃料も下げられるでしょう。

 

多くの医師は「オンライン診療は儲からない」という先入観を抱いています。確かに、オンライン診療の診療報酬は点数が低いかもしれません。

 

ただ、人件費や賃料などの固定費を抑えられるという側面もあるのです。

スタッフのストレスを軽減し、退職を防ぐ効果も

一般企業では、上司や同僚との人間関係がうまくいかずに退職する人が数多くいます。これは、医療業界でも同様です。

 

厚生労働省の「看護職員就業状況等実態調査結果」では、退職経験がある看護師に退職理由(主なものを3つまで)を聞いています。このうち「人間関係がよくないから」と答えた人は12.8%で、「出産・育児のため」(22.1%)、「結婚のため」(17.7%)、「他施設への興味」(15.1%)に次ぐ第4位でした。

 

参考:厚生労働省「看護職員就業状況等実態調査結果」平成22年8月~平成23年1月実施
【図表】看護師の退職理由 参考:厚生労働省「看護職員就業状況等実態調査結果」平成22年8月~平成23年1月実施

 

医療業界は厳しい職場環境です。ちょっとしたミスが患者の命に関わるため、仕事のストレスは他業界に比べてはるかに重いものです。

 

また、求められる知識のレベルも高く、特に新人のうちは大きなストレスを抱えながら働くことになりますし、入院施設のある医療機関であれば勤務時間が不規則になりがちで残業も珍しくありません。そのため、精神的な余裕を失ってスタッフ同士が衝突する危険性も高いのです。

 

そのうえ、クリニックは狭い職場です。もし、スタッフ同士の仲が悪くなっても、関係者を異動させて引き離すなどの処置は取れません。その結果、人間関係が悪化して悩んでいるところは決して少なくないのです。

 

昨今、そのストレスの要因として大きいのは、コロナ感染の危険に常にさらされているということです。

 

こうした問題も、オンライン診療を導入すれば改善できる可能性があります。少しでもスタッフのストレスを取り除いてあげるのです。オンライン診療ならこうしたストレスから解放されるため、結果、人間関係の改善をもたらすのです。

 

 

鈴木 幹啓

すずきこどもクリニック院長

 

 

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すずきこどもクリニック 院長 

すずきこどもクリニック(小児科):http://www.suzukikodomo.jp/

【経歴】
自治医科大学卒業
三重大学小児科入局
三重県立総合医療センター(小児一般病棟、新生児集中治療室、小児救急を担当)
国立病院機構三重中央医療センター(新生児集中治療室を担当)
国立病院機構三重病院 (小児急性期病棟、アレルギー・糖尿病・腎臓病慢性期病棟、重症心身障害児病棟を担当)
山田赤十字病院(小児一般病棟、新生児集中治療室、小児救急を担当)
紀南病院(小児科医長)
平成22年5月、新宮市に「すずきこどもクリニック」を開院

【資格】
日本小児科学会認定小児科専門医、日本小児アレルギー学会
日本小児皮膚科学会、日本小児精神神経学会
(ケアマネジャー資格)(日本老年医学)(日本認知症学会)

著者紹介

連載「3分診療」で収益倍増!開業医を救うオンライン診療

※本連載は、鈴木幹啓氏の著書『開業医を救うオンライン診療』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

開業医を救うオンライン診療

開業医を救うオンライン診療

鈴木 幹啓

幻冬舎メディアコンサルティング

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