オンライン診療なら、コロナ禍でも「収入7%減」程度で済む…勝ち組ドクターの経営シミュレーション

オンライン診療なら、コロナ禍でも「収入7%減」程度で済む…勝ち組ドクターの経営シミュレーション
(※写真はイメージです/PIXTA)

受診控えによって患者数が減少している今、従来どおりの経営戦略では、医療機関が経営状況を回復させることは難しいでしょう。クリニックはこの窮地に、どのように対応すべきでしょうか。自身もまた開業医である筆者は、「オンライン診療」への進出が打開策になると考えています。オンライン診療の有無によって、クリニックの未来はどのように変わるのでしょうか?

オンライン診療で「受診控え」の経営ダメージを激減

患者にとってメリットがあり、ニーズが高まりつつあるオンライン診療は、医療機関が自院の受診控え患者を呼び戻す手段として期待できます。

 

【図表】は、10ヵ月間におけるクリニックの収入モデルを示したもので、コロナ禍の受診控えが目立ってきた際、実際に私がシミュレーションしたものです。状況をわかりやすくするため、全患者が1ヵ月に1度のペースで通院していると仮定しています。

 

当院資料より作成
【図表】10ヵ月間におけるクリニックの収入モデル 当院資料より作成

 

コロナ禍前の月あたり収入を100とすると、コロナ禍前には10ヵ月で1000の収入を得ていたことになります(A)。一方、受診控えによって全患者の4割が3ヵ月に1度の診察ペースに切り替わった場合、2、3月などの患者数は以前の6割に落ち込みます。その結果、10ヵ月間トータルの収入は、コロナ禍前より24%も減ってしまいます(B)。

 

ところが、受診控えをするはずだった4割の患者が、1ヵ月に1度のペースでオンライン受診したらどうなるでしょうか。オンライン診療で得られる診療報酬を外来の7割と見積もると、2、3月などの収入は「60(外来患者から得られる収入)+28(オンライン患者から得られる収入)=88」となります。すると、10ヵ月トータルの収入は、コロナ禍前の7%減程度で済むのです(C)。

オンライン診療の「限界」こそ外来を増やすチャンス

また、オンライン診療にはもう一つの可能性があります。それは集患です。他院で受診控えをしている患者をオンライン診療で獲得するのです。

 

とはいっても、医師なら誰もが知っているとおり、オンライン診療には限界があります。

 

また、患者側もそのことを薄々知っています。「オンラインだけで大丈夫だろうか? 本当は、直接診察してもらうほうが安心できるのだが…」と考えているのです。

 

そのため、医師から「もう少し詳しく調べたいので、ぜひ来院して検査しましょう」と伝えれば、素直に従う可能性が高いものです。

 

オンライン受診をした患者を外来に誘導することができれば、新規患者からオンライン診療の診療報酬と外来の診療報酬をダブルで獲得できます。

 

この「二重取り」は、クリニックにとって非常においしい状況です。

 

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オンライン診療の有無は「コロナ後の患者数」まで左右

ニーズの高まりに応えるかのように、現在、オンライン診療の規制緩和の動きが進んでいます。

 

ここ20年ほどで、国はデジタル化を推し進めています。マイナンバーカードの普及、デジタル庁の創設、脱・はんこなどの政策を推し進め、社会全体をデジタル化しようとしているのです。

 

そして、オンライン診療の動きも同様です。菅義偉総理は2020年10月の所信表明演説で、オンライン診療の恒久化を進めると明言しました。また、加藤勝信官房長官も記者会見で「コロナ禍で『オンライン診療』を活用してきた評価なども踏まえ、社会全体がデジタル化を進めていく流れのなかで恒久化は必要だ」と発言しています。

 

こうした流れを受け、厚生労働省は、「安全性と信頼性をベースに、初診も含めオンライン診療は原則解禁する」という基本方針をすでに明らかにしています。医師会はオンライン診療に対して慎重論を唱えていますが、医療業界もデジタル化の波から逃れることはできません。

 

同時に、デジタル化は消費者の行動に変化をもたらしました。

 

例えば、「レビューサイト」は、我々の暮らしに欠かせない存在になりました。外食する際には食べログを使ってお店を検索しますし、美容院を選ぶときにはホットペッパービューティーを利用して比較検討を行います。

 

いずれは医療機関もレビューサイトで比較される時代がやってきます。多くの患者は、レビューサイトやSNSで評判の良いところを選ぶようになるでしょう。このときオンライン診療をいっさいしていない医療機関は、見向きもされなくなるはずです。

今こそ「勝ち組クリニック」になる絶好のチャンス

2021年の時点で、オンライン診療システムを使って本格的なオンライン診療に乗りだしている医療機関は、せいぜい2~3%程度ではないかと私は見ています。ニーズの高まりや規制緩和の動きがあり、かつライバル不在の今、他院に先がけてオンライン診療を早期導入することが、集客や利益獲得のカギとなるのです。

 

厚生労働省はオンライン診療の算定条件として「緊急時に概ね30分以内に当該保険医療機関が対面による診察が可能な体制を有していること」と定めています。

 

そのため、北海道の医師が沖縄県の患者を診たりすることはできません。つまりオンライン診療であっても、患者は自院の周辺に限られるというわけです。

 

もし、自院に近い医療機関がオンライン診療にいち早く進出し、あなたのクリニックが出遅れたらどうなるでしょうか。

 

まず考えられるのは、既存患者の大量流出です。すでに述べたとおり、オンライン診療は受診への心理的ハードルが低いのです。

 

そのため、新型コロナウイルスの感染リスクを嫌い受診控えの傾向がある患者が、オンライン診療に奪われる危険性が高くなります。

 

また、多忙で通院の余裕がないビジネスパーソン、足腰が弱くて通院を嫌う高齢者なども、オンライン診療に逃げだす危険性が大です。

 

新規患者の獲得難易度も、跳ね上がるに違いありません。オンライン診療は受診への心理的ハードルが低いため、軽症で「このくらいならわざわざ病院に行くほどでもないか…」と考えている患者でも受診してもらうことが可能です。

 

そこで好印象を抱かせれば、定期的に通院してもらうことが期待できます。その分、オンライン診療をしていない同地域の医療機関からは足が遠のくわけです。

 

つまり、オンライン診療の早期導入によって、新規患者を爆発的スピードで獲得できたり、他院の既存患者を奪ったりすることが可能だといえます。

 

多くの医師、クリニックはオンライン診療への進出をためらっています。

 

しかし、今は大チャンスです。ここで思い切って前に進めば、多くの利益を獲得できるはずです。

 

 

鈴木 幹啓

すずきこどもクリニック院長

 

 

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※本連載は、鈴木幹啓氏の著書『開業医を救うオンライン診療』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

開業医を救うオンライン診療

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鈴木 幹啓

幻冬舎メディアコンサルティング

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