※画像はイメージです/PIXTA

アメリカ在住の方が亡くなった際、相続人は現地の裁判所に、遺産を分配するための「プロベート」という手続きを申立てる必要があります。プロベートには弁護士の起用が基本となるほか、手続きのたびに高額な費用が発生するため、十分な注意が必要です。国際法務に精通する中村法律事務所の中村優紀代表弁護士が解説します。

弁護士に追加の依頼報酬が発生する例

また、PRに選任された弁護士に、さらに追加報酬が発生することがあります。たとえばカリフォルニア州裁判所規則は、追加報酬が発生する業務の一例として以下を挙げています。

 

◆通常の範囲を超える稼働による遺産の調査、確定

◆遺産に不動産がある場合の当該不動産の売却

◆負債がある場合の保証

◆遺産に関する訴訟代理

◆遺言の争いに関する処理

 

追加報酬の具体的内容は各州によって異なります。そのため相続人は、PRになる弁護士との間では、追加報酬としてどのような項目、金額がありうるのか、できる限り事前にヒアリングをすることが求められます。

現地との仲介を「日本の弁護士」に依頼するメリット

また、残された相続人が日本に居住する日本人の場合、英語の問題や、現地州法の相続手続きに関する知識が十分ではないという問題があります。そのため、一から現地の弁護士を探して、申立・PRの手続を依頼し、必要な情報を英語で提供し、プロベート手続の進捗を把握していくことは、至難の業と言えます。

 

そこで、日本の弁護士で、英語対応ができ、アメリカ相続に精通している方がいれば、現地弁護士とのやり取りのハブの役割を依頼することが現実的であり、間違いなくプロベート手続きを進められるのでお勧めです。

 

その場合、当該弁護士の報酬が別途発生することになりますので、費用感は事前に確認するようにしましょう。

 

日本側でも弁護士を用意した方がよいという点について、筆者が担当した実例を紹介します。

 

アメリカでプロベート手続が発生した際、相続人は全員日本人でした。そして、その相続人全員から、PRの選任同意書にサインをもらい、それを現地弁護士に提出することになっていました。

 

しかし、相続人の中には、PRの意味がわからない、サインすることで自分がどのようなデメリットがあるかわからず不安という理由で、サインを拒絶する方がいました。

 

そこで筆者が、その相続人の方に「アメリカのプロベートという相続手続がどのように進むのか」「PRとはどのような役割があるのか」「PR選任同意書にサインをすることにより自身の権利関係に影響があるのか」などについて説明し、納得してもらうことができたのです。

 

もし、相続人間だけで、このPRの選任同意書の意味について説明が行われた場合、様々な混乱の発生が予想されます。例えば、説明内容に万一不備などがあれば、相続人間の不和、争いの種に繋がりかねません。

 

日本側で弁護士を起用し、現地弁護士からの法的アドバイスを正確に伝えられる体制を整えておくことが、後々の紛争予防のためにベストな選択といえるでしょう。

 

※こちらの原稿内容は執筆時点のものです。税務に関する法改正、制度変更等の最新情報は、アメリカの税務に詳しい税理士・会計士にご相談ください。

 

 

中村 優紀

中村法律事務所 代表弁護士

ニューヨーク州弁護士

 

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