大河ドラマ「青天を衝け」。放送開始以降、高視聴率を維持し、最近では「平岡円四郎ロス」が報じられるなど、世間の注目は高まる一方だ。本記事では奥野宣之氏編訳の書籍「抄訳 渋沢栄一『至誠と努力』人生と仕事、そして富についての私の考え」(実業之日本社)より一部を抜粋し、吉沢亮演じる主人公・渋沢栄一が実際に記した仕事論を紹介していく。
大河ドラマ「青天を衝け」主人公・渋沢栄一の「6つの教え」 ※画像はイメージです/PIXTA

あとから振り返って「やましいところ」がないように

①仕事そのものに忠実であれ

 

月給が少ないからこれだけの仕事しかしないとか、ボーナスをくれないから働かないとかいうのはダメだ。これは報酬に忠実ではあるが、仕事に対する誠意が欠けている。

 

商売でも同じであって「これは儲けが少ないから」という場合でも、いいかげんに扱ってはいけない。利益の少ない商品ならば、できるだけ数を売ろうと努力するべきだ。

 

月給取りなら、雇い主が給料アップをせざるを得ないくらい心を込めて働かねばならない。

 

②スランプを乗り越えろ

 

学校では秀才とか優等生とか言われて社会に出てくる若者がいる。あまり仲間から賞賛されるものだから、「自分は必ず他人よりずっと出世して、望む地位まですぐ昇っていける」という考えを抱いている。

 

でも、実際に仕事をしてみると思い通りにならなかったりする。就職後はまったく名前を聞かなくなって「あの人は今?」みたいになってしまう。

 

しかし、こういう状態こそ、現実社会を生きるための「学びの時代」なのだ。例えるなら、谷に入って森林の中を徘徊している状態である。もし、この期間に志を変えず、力を落とさないまま猛進するなら、やがて誰もが思いもしないような場所にたどり着く。「よく頑張った、すごい!」と言われるときが、きっと来るだろう。

 

③いつでも全集中

 

人に接するときは、どんなに大きな要件でも、あるいは小さな相談だろうと、すべてきちんと対処する。ほかのことは一切考えないで、フルパワーで精神を傾ける。このように自分を鍛えていった方がいいと私は思っている。

 

その結果、物事が上手くいくか否かはその人の腕にかかっている。だが、少なくともその人が得られる中でもっともいい成果を上げられるはずだ。

 

あとから振り返っても、やましいところが一点もないから、精神上も安らかでゆったりした気分でいられる。

 

前のことを頭で考えながら次のことをやるのは、まるで人の話を聞きながら本を読んでいるようなものだ。どちらもわからなくなってしまう。