(※写真はイメージです/PIXTA)

2021年3月、ファミリーオフィス(超富裕層の資産管理を行う会社)の「アルケゴス・キャピタル・マネジメント」が、デリバティブ取引で大きな損失を出して破綻しました。また、取引金融機関にも被害が及び、日系も含む世界を代表する大手金融機関で合計1兆円以上の損失を計上しました。今回は、このアルケゴス問題を教訓にして、個人投資家が守るべき点を、レオンテック証券株式会社の久保智代表取締役が解説します。

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「過剰レバレッジ」が原因となった巨額損失事例

他の投資にも言えることだし、様々なメリットもあるが、誰にでも巨額の損失が起こりえるのがデリバティブだ。過去の巨額損失で、かつ、破綻した海外事例は以下の通り。共通点は、過剰レバレッジ(自己資金対比過大なリスクを取る)であると考えられる(図表2)。

 

[図表2]過剰レバレッジが原因となった巨額損失事例

 

ロング・ターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)は、ノーベル経済学賞受賞者や金融界の重鎮も参加して「ドリームチーム」と言われ、設立後数年は年間平均利回りが40%を超える驚異的なリターンを実現し、多額の投資資金を集めた。

 

同社は通常は比較的値動きが小さい債券市場を中心に25倍のレバレッジをかけていたが、1997年のアジア通貨危機、1998年のロシア財政危機のあおりを受けて、パフォーマンスが大幅に悪化し、ファンドは閉鎖に追い込まれた。

 

【図表2】は海外の代表的な事例だが、もちろん国内でも歴史を紐解くと様々な事例がある。

投資の鉄則…レバレッジをかけずに余裕資金で行うこと

投資の王道は、余裕資金での「長期・分散・積立投資」であると考えている。

 

具体的な例をあげると、世界は概ね傾向として経済成長すると考えるのであれば、手元にまとまった資金がある場合でも全額を一度に投資するのではなく、毎日や毎月一定金額を購入する積立投資で、手数料の安価な全世界株式のインデックスファンドを買うのが一番気持ちが安定するのではないか。

 

なぜなら、相場が上がり続ければ含み益が増加するし、反対に相場が下落した場合は購入金額が同じであれば、より多くの株式を実質的に購入することができるからだ。株式を内包する投資信託・インデックスファンドを購入することは間接的に企業を応援し、その見返りに企業収益の一部を配当や株価上昇という形でリターンを得る行為ともいえる(もちろん、損失が発生することもある)。

 

また、個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)、つみたてNISA・一般NISAといった制度を活用することで、税制上のメリットを享受することができる。

 

筆者自身も仕組債投資も実践しており、すべての投資に言えることでもあるが、デリバティブ・仕組債の取引を行う場合は、余裕資金の一部で行うのが望ましい。

 

アルケゴスの例の通り、デリバティブ等の金融商品をレバレッジを活用し、当初の投資に必要な金額(当初の担保金)よりも大きな想定元本の取引を行うことで、自己資金以上の損失が発生することもある。

 

一方で、デリバティブを内包する債券である仕組債は、投資金額(元本以上)に損をすることはないが、個別商品が自身の資産運用目的に適っているのか、費用やリスク対比の効果は適正なのか、最大リスクを許容できるか等を考えることが重要だ。

 

運用で巨額の富を築いたプロでもレバレッジを活用し相場予測が外れると、本稿で述べたような結果になりえる。金融の専門家が見通しや判断を間違えることもあるのだから、自分も間違えることがあるのは当然だ。資産運用は自己責任であり、仮に大きく間違えたとしても大事故に繋がらないよう心がけてほしい。

 

久保智

レオンテック証券 代表取締役社長

 

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