「初のアパート」「2棟目のアパート」税務に違いが…
【事例2】 新しくアパートの経営を始めます。手始めとして土地を購入し、建物を建設していましたが、確定申告において建築中のローン利息を全額必要経費として計上しました。ところが、税務署から間違いを指摘されてしまいました。何棟もアパート経営をしている友人からあらかじめローン利息も必要経費にできると聞いていたのに、どうして間違いなのか、納得がいきません。一体どこがいけなかったのでしょうか。
【失敗のポイント】 新たにアパート経営を始める前、アパートの建築中に支払ったローン利息は、まだ事業を開始する前なので、建物の取得価額に算入します。つまり、この場合の金利は経費で落とすことができないということになります。
【解説】 金融機関からのローン利息部分の取り扱いについては、実は時期とケースによって異なります。以下それぞれの場合で分けて詳しく見ていきましょう。
◎固定資産を取得するためのローンの利息(賃貸事業開始後)
毎年の必要経費となります。しかし、不動産所得が赤字の場合、土地部分に関するローン利息は必要経費とはなりませんので注意が必要です。ただし、この場合であっても建物部分に関するローン利息については必要経費となります。
ローン金利が土地部分についてのものか、それとも建物部分についてのものかで取り扱いが変わってきます。建築資金としてローンを組む段階から、元本については土地についてのものかそれとも建物についてのものか、どちらに該当するか注意をして契約を結ぶ必要があります。
◎アパート建築中の利息(新たに不動産賃貸事業を開始する前までの期間)
建物の取得価額に含めます。新しくアパート経営を開始する場合、アパートの建築中及び不動産賃貸事業を開始する前までの期間に支払ったローン利息については、賃貸収入が発生していないため、その年の必要経費には算入できません。この場合のローン利息については、建物の取得価額に含めて、減価償却費の対象となります。
つまり、減価償却費として将来賃貸収入が発生して以降に、各年に相応する経費として按分されることになります。そのためローン利息については、一旦資産に計上されることから、経費として扱われるタイミングが長期に及び、かつ各年において少額に留まってしまうことになりますので注意が必要になります。
◎2棟目のアパートを建築中の利息
既にアパート経営をしていて、2棟目を建てるために借りたローン利息は必要経費になります。既に不動産賃貸事業を開始している場合には、ローン利息について経費とするだけの不動産賃貸収入の実際の裏付けがあるため、資産に計上する必要性がありません。そのため、この場合に発生したローン利息についてはそれぞれの年の確定申告時に必要経費として処理することとなります。
◎建て替え期間中の利息
既にアパート経営をしていて、現在の建物を建て替えるためにローンを組んだ場合、立て替え期間中の利息は全額必要経費になります。
これも先程の『◎2棟目のアパートを建築中の利息』での取り扱いと同じく、既にアパート経営をしているということは、現在の建物を建て替えるためのローン利息も経費とするに足りる不動産賃貸収入について、実際の取引の裏付けが既に存在するため、資産に計上して将来の費用として按分する必要がありません。そのため、この場合に発生したローン利息についてもそれぞれの年の確定申告時に必要経費として処理することとなります。
不動産売却の際の「譲渡所得」の計算はどうなる?
これまでの話を踏まえると、実際にアパートを売却した際には不動産売却の際の譲渡所得はどのように計算されるのでしょうか。
この点、アパートの売却の際の譲渡所得の金額については、アパートの敷地や建物を実際に売却した金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。
この場合、取得費とは、土地について考えると、実際に購入した際の購入代金や購入手数料などの合計額となります。一方で建物の場合は、同じく購入代金などの合計額から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた額となります。この取得費には、先の説明に述べた借入金の利子も含まれることとなります。
重ねて借入金の利子とは、土地建物を購入するために資金を借り入れた日からその土地建物を実際に使用開始する日までの期間に対応する部分が該当します。極端な話になりますが、借入金で購入した土地や建物を全く使用することなく売却した際には、借り入れた日から売却した日までの利子が全額取得費に含まれることになります。
ただし、使用開始する日までの期間に対応する利子の額であっても、事業所得や不動産所得などの必要経費に含めた借入金の利子は取得費に含めることはできませんので注意が必要です。
経費として収入から差し引くことができなかった利息については、一旦資産に計上されることになりますから、売却の際に生じる譲渡所得を計算する際にはその同じ金額分だけ所得を抑える効果があるのですね。
さらにこの譲渡所得に対して税率をかけてアパート不動産の譲渡についての税金が求められることになります。
内藤 智之
辻・本郷 税理士法人
立川事務所 所長
税理士
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