前回は、自宅兼病院の開業で活用したい「住宅ローン控除」の適用条件について説明をしました。今回は、動物病院の経営は個人・法人のどちらが有利かを見ていきます。

法人化のメリットは資金面・信用性・節税効果など

動物病院を個人事業の形で営むのか、法人にするのかは、開業時に検討すべき重要な課題の一つといえます。まず、法人化するメリットとしては、一般的に以下のような点が挙げられています。

 

①資金を集めやすい(銀行などの融資が得やすい)

②信用を得やすい(社会通念として、個人よりも法人のほうが信頼感がある)

③事業の承継がしやすい(資産が株式等の形に変わる結果、後継者に移転しやすくなる)

④節税効果が大きい(後述)

 

一方、デメリットとしては、

 

①法人化するための手間と費用がかかる

②社会保険料の負担が増えるおそれがある

 

ことなどが指摘されています。しかし、これらのデメリットは法人化のメリットの大きさに比べれば、いずれも過大視すべきものではありません。とりわけ、④節税効果のメリットは非常に魅力的といえます。この点に関して、詳しく確認しておきましょう。

 

まず、個人事業(所得税)の最高税率よりも、法人(法人税)の最高税率のほうが低いので、最高税率の適用を受けるほど売り上げが大きくなったような場合、法人のほうが納める税金が安くなります。

 

また、個人事業では代表者へ給与を支給することができませんが、法人ではそれが可能となります。その結果、給与所得控除、つまりは給与から控除される額が増えることになります。

 

さらに、家族を従業員とした場合の節税効果も個人事業の場合に比べて高まります。すなわち、個人事業の場合には、青色申告書を提出する事業者とならなければ、生計を一にする配偶者や親族に対して支払う給料は、必要経費に算入できません。それに対して、法人の場合には、使用人に対して支給する給料は無条件に損金に算入されるのが原則であり、配偶者や親族に対して支払う給料もその例外ではありません。

退職金賃借料・借入金利子を損金扱いできる

そのほかにも、法人には以下に列挙するような税務上のメリットがあります。

 

●事業主自身や配偶者その他の親族に支給した退職金が損金扱いになる。

 

個人事業の場合、使用人に対して支給した退職金は必要経費に算入されますが、事業主自身や配偶者その他の親族に支給したものについてはそのような扱いを受けません。

 

●家族に対する賃借料・借入金利子も相当な金額であれば損金に算入される。

 

生計を一にする配偶者、その他の親族に支払う地代家賃などは必要経費になりません。逆に、受け取った人も所得としては考えません。これは、土地や家屋に限らずその他の資産を借りた場合も同様です。

 

●赤字のときには減価償却する必要がなく、償却による減価償却資産の費用化を次期以降に繰り延べられる。

 

個人事業では、減価償却は強制償却であり、赤字のときにも償却を行う必要があります。

 

このように、法人化による税務メリットは数多くあるうえ、現在、法人税の引き下げが検討されているところです。したがって、法人化による節税効果は今後、さらに高まることが予想されます。

本連載は、2014年8月27日刊行の書籍『どうぶつ病院を繁盛させる50の方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

どうぶつ病院を繁盛させる50の方法

どうぶつ病院を繁盛させる50の方法

百瀬 弘之

幻冬舎メディアコンサルティング

勤務医の時代はたとえ給料は安くても、独立して動物病院を開業すれば十中八九成功が約束されていた獣医師。 ペットブームの恩恵を受けて市場を拡大し続けてきた獣医師業界ですが、近年の動物病院の増加により飽和状態に。さら…

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