
不幸な事故のせいで意識が戻らない妹、そんな妹を見捨てようとする妹の家族。幸い、姉妹には資産家の父親がいますが、妹を守るために父親の財産を多く相続させれば、ゆくゆくは冷酷な妹家族に実家の財産がわたることになり、妹思いの姉はジレンマに陥ります。解決方法はあるのでしょうか? 不動産・相続問題に強い山村法律事務所の代表弁護士、山村暢彦氏が解説します。
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<最高裁判決の考察>
「タワマン節税」の否認事例と“否認指摘”を回避するには?
仲のいい妹が、出先で事故に遭い…
横浜在住の専業主婦・彩子さんには、美紀さんというとても仲のいい妹がいます。2人は会社経営者の父親と専業主婦の母親のもと、裕福な家庭環境で育ちました。姉妹は大学を卒業後、数年間の会社勤めを経てそれぞれ結婚しました。
彩子さんは子どもに恵まれなかったのですが、美紀さんは3人の子どもに恵まれました。とはいえ、いずれの家庭も円満で、お互いによく行き来していました。
* * * * *
ある日の夜、いつも通り自宅で過ごしていた彩子さんのもとに、妹の夫・正則さんから突然電話が入りました。
「お姉さん、大変です! 美紀が交通事故に遭って、いま、集中治療室にいます」
「えっ!?」
電話口で慌てふためく正則さんに落ち着くように促しつつ話を聞くと、美紀さんは友人に会うために出かけた隣県で、帰り際、交通事故に遭ったというのです。
「容体は?」
「ついさっき、緊急手術が終わったところです。状況はまだわかりませんが、かなり深刻です」
「そんな…」
美紀さんは隣県の総合病院に3週間入院したあと、容体が落ち着いたため、自宅近くの横浜の病院に搬送されました。しかし、家族や親族の期待はむなしく、美紀さんの意識が戻ることは絶望的でした。頭を強打し、脳に損傷を受けたのです。
彩子さんは足しげく病院に通い、目を覚まさない妹を見舞いました。高齢の父親は介護認定を受けて有料ホームに入所しており、数年前に母親を亡くしてからめっきり弱ってしまっています。彩子さんはそんな父親に妹の状況を伝えられず、詳しい話ができないままでした。
事故から半年近くたつと、美紀さんの夫と子どもたちは次第に病院から足が遠のくようになりました。仕事も忙しいだろうし、子どもたちも勉強があるだろうから…と、できるだけ気にしないようにしていた彩子さんですが、ある日、美紀さんの夫から、折り入って話があるとの連絡がありました。
