農地の相続時には、所得税や相続税等の申告が一般的な相続と同様に必須となります。加えて農地の名義変更など、踏むべき手順は多岐に渡り注意が必要です。ここでは、農地の相続で発生する税金の概要のほか、所得税の準確定申告について税理士の奥田周年氏が解説します。※本記事は、『図解と事例でよくわかる 都市型農家の生産緑地対応と相続対策』(ビジネス教育出版社)より抜粋・再編集したものです。

農地の相続時にも必要な「所得税の準確定申告」

(1)申告期限 

 

所得税の準確定申告書の提出期限は、被相続人に確定申告義務がある場合は、相続開始日の翌日から4ヵ月以内となり、被相続人の納税地の税務署長に提出します。

 

なお、還付申告書を提出できる場合は、期限の定めはありませんが、5年間行使しないと時効になり還付を受けることができなくなってしまいます。

 

【申告期限の具体例】

 

前年中に相続が開始した場合

 

本年の3月15日までに相続が開始した場合

 

(2)申告書を提出する人 

 

相続人と包括受遺者が準確定申告書を提出し、それぞれの相続分に応じて納税します。

 

①法定相続人と法定相続分

 

法定相続人とは、被相続人から財産を引き継ぐ権利のある人をいい、民法で定められています。配偶者は常に相続人となりますが、血族相続人は、下記のように順位が定められています。

 

 

たとえば、被相続人に子がいる場合は、「配偶者と子」、子がいない場合は、「配偶者と父母」、父母もいない場合は、「配偶者と兄弟姉妹」が相続人となります。なお、婚姻関係のない方は、相続人に該当しませんので、ご注意ください。

 

誰が相続人に該当するかは、被相続人の生まれてから亡くなるまでの戸籍と相続人の戸籍を収集して確定します。

 

法定相続分とは、各相続人が相続できる民法で定められている割合をいいますが、実際の遺産分割協議では、各相続人の合意があれば法定相続分どおりに分割する必要はありません。

 

●法定相続分(配偶者がいる場合)

配偶者は常に相続人。そのほかの血族相続人がいるときは法定相続分に従う。

 

●法定相続人とその順位

 

②包括受遺者

 

包括遺贈とは、財産の全部又は一部を割合で遺贈する方法です。

 

この包括遺贈により財産を取得する者を「包括受遺者」といい、相続人と同一の権利・義務を有します。

 

このため、相続人がいる場合は、相続人と包括受遺者が遺産分割協議により財産と債務の承継者を決めることになります。

 

(3)事業を承継した相続人の青色申告承認申請の期限 

 

被相続人が青色申告をしていたかどうか、相続人が事業を営んでいたかどうかにより、申請の期限が異なります。

 

①被相続人が青色申告をしていなかった場合

 

相続人が以前より事業を営んでいた場合は、相続開始の年の3月15日までに青色申告承認申請書を提出すれば、その年から青色申告を適用できます。

 

●相続開始日が3月15日以前の場合

 

●相続開始日が3月16日以後の場合

 

相続人が以前より事業を営んでいなかった場合は、相続開始の日(事業開始の日)から2ヵ月以内に青色申告承認申請書を提出すれば、その年から青色申告を適用できます。

 

●相続開始日が1月15日以前の場合

 

●相続開始日が1月16日以後の場合

 

②被相続人が青色申告をしていた場合

 

相続人が以前より事業を営んでいた場合は、上記①と同様に相続開始の年の3月15日までに青色申告承認申請書を提出すれば、その年から青色申告を適用できます。

 

相続人が以前より事業を営んでいなかった場合は、相続開始日により、申請書の提出期限が異なります。

 

1月1日から8月31日までの間に相続が開始した場合

相続開始日から4ヵ月以内に提出します。

 

9月1日から10月31日までの間に相続が開始した場合

相続開始年の12月31日までに提出します。

 

11月1日から12月31日までの間に相続が開始した場合

相続開始年の2月15日までに提出します。

 

 

奥田 周年

OAG税理士法人 社員税理士

行政書士

 

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