2021年の中国全人代「習近平氏への過度な称賛」に見えたもの

2021年3月に開催された中国全人代。日本で特に注目されたのは、成長率目標や第14次5ヵ年規画、香港の選挙制度修正等だった。しかし、中国内外の華字誌報道や中国語文献の詳細な内容を追うと、日本のマスコミ報道内容だけではわかりにくい「今後の中国の動向」を予見するヒントが隠れている。中国内外の華字誌報道や中国語文献に含まれるわずかな手掛かりから、中国情勢の微細な変化を読み取っていく。本稿は筆者が個人的にまとめた分析・見解である。

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単なる飾りとされてきた「全人代」「政協会議」だが…

2021年3月に開催された年1回恒例の全国人民代表大会(全人代。中国では通常、同時に開催される政治協商〈政協〉会議と合わせ両会と呼ばれる)をめぐる環境は、以下の点で例年と大きく異なった。

 

①前年からの新型コロナパンデミックの影響がなお続いている。

②2021年は中国共産党建党100周年にあたる。

③翌年秋に第20回党大会(二十大)を控えている。

 

特に二十大は5年周期の政権交代(換届)となるため、長期政権を企図していると噂される習近平国家主席の去就を焦点に、指導層・各派間の駆け引きが高まっていると思われる中での開催となった。

 

日本では、経済面で2021年の成長率目標と第14次5ヵ年規画、政治面では香港の選挙制度修正が特に注目された。ここでは、主として中国内外の中国語文献を踏まえ(そのため、原文のニュアンスが伝わるよう、元の中国語を適宜解説の上記載)、日本ではあまり報道されていない側面に焦点を当てる。

 

以前から内外で、両会はゴム印(橡皮図章)を押すだけの会議、単なる飾り(花瓶)だとやゆされてきた。そうした性格はなお基本的には大きく変わっておらず、両会の中からかすかな手がかり(蛛絲馬跡)を探し、何らかの変化を読み取ろうとする試みは引き続き有益だろう※1

 

※1 2017年3月4日付で「BBC中国語版」が、同年両会直前に動画を掲載している。「両会は中国の政策決定で何の役割も果たしていないと批判されている。では、両会は橡皮図章なのか? 答はイエスでもありノーでもある。確かに両会で活発な議論を見ることはないが、注意深い専門家は、中国政治経済の行方についての蛛絲馬跡を両会から探している」という趣旨である。左に全人代、右は政協のシンボルマーク(概述図)、中央に「Xi Jinping(習近平)」と書かれたイラストが並ぶシーンが印象的。

習氏にのみ「2つの茶杯」が出された理由

海外華字誌が最も注目したのは、会議中、習氏にだけ2つの茶杯が用意されていたことだ。2019年、習氏は茶のサービスをする女性を全て男性に替えたが、その理由として次のような点が噂された。

 

①以前、江沢民氏が茶のサービスをする若い女性を見つめているような様を写真に撮られたことがあり、党のイメージが傷つくことを未然に回避。

②自らの安全のため(毒を盛られないよう)、サービス員を特定。

①は過去にも類似の話があった。海外誌が習政権下でメディア統制が強まっている証左として、党が両会前に国内メディアに配布したとされる「報道にあたって留意すべき21か条」をリークしたことがある※2

 

※2 2016年3月8日付China Digital Times、同年3月9日付The New York Times。

 

その中に「プレスルーム外の本筋でない話、例えば女性の通訳、ジャーナリスト、両会代表委員が美人だといった報道は慎むこと」との条項があり、「過去、政府系メディアにもそうした報道が多くあった」とされていた。

 

実際、温家宝前首相が演説で多用する故事成語を見事に英語に同時通訳した女性が美人だともてはやすメディアが多かった(『米中貿易戦争さなかの「全人代」から中国の政治経済を読む』参照)。

 

習氏にだけは茶を追加で注ぐのではなく、茶杯ごと替えるサービスは2020年もあったが、茶杯が2つ置かれたのは今年が初めてで、習氏の「定于一尊」(語源は「史記秦始皇本紀」。あらゆる思想や道徳などの基準を決める最高権力者)がさらに強まった小さな証拠かもしれない(図表、連載『中国・社会主義市場経済の危うさ…「統制経済・個人崇拝」への逆戻りはあるのか?』参照)。

 

(注)「一锤定音」は「どらの音は最後のひと打ちで決まる→何事も権威ある者の一声で決まる」。 (出所)2020年1月6日付海外華字誌自由亜洲電台の「变态辣椒」名掲載挿絵を転載
[図表]習氏への権力集中をやゆ
(注)「一锤定音」は「どらの音は最後のひと打ちで決まる→何事も権威ある者の一声で決まる」。
(出所)2020年1月6日付、海外華字誌自由亜洲電台「变态辣椒」名掲載挿絵を転載

不和の噂もある王岐山国家副主席、異例のふるまい

この関連で、かつて腐敗汚職取り締まりで習氏と蜜月関係にあったが、近年は不和も噂される王岐山国家副主席が両会中の会議で、「習思想を指導指針として」「習氏を核心とする党中央は高度に結束」など、わずか数分の話の中で8回も習氏にごまをすった(大拍馬屁。他人の駄馬の尻を叩いて良い馬だと褒める)として関心を呼んだ。

 

両会中に習氏を持ち上げ(棒習)、称賛する(頒習)のは異例で、特に新華社や人民日報が習氏を「舵手」、舵を取る指導者と呼んだことは、その扱いが毛沢東に並ぶ、あるいはそれ以上になったと注目された。二十大に向けての習氏の地盤固めとの見方が多いが、こうした言動は習氏に近いところからだけ出ており、何故わざわざ両会中かという疑問もある。実は習氏は見かけほど、自らの将来に自信がないことの表れかもしれない。

 

(次回に続く)

 

 

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1976年、大蔵省入省。1990年、アジア開発銀行理事代理、2000年、香港理工大学中国商業センター客員研究員。2003年、アジア開発銀行研究所総務部長、2006年以降、財務省神戸税関長、財務省財務総合政策研究所次長、財務省大臣官房政策評価審議官、2010年から大和総研常務理事等の要職を歴任。 2015年、NWB(日本ウェルス)の独立取締役に就任。一橋大学卒。香港中文大学普通話課程修了。

著者紹介

連載2021年中国全人代、もうひとつの側面を読み解く

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