ドラマのようですが、葬儀後に婚外子の存在が発覚するケースは、現実でも起こり得ます。四十九日も遺産分割協議も終了したあと、突然現れた婚外子を名乗る存在に、相続人はどう対処すればいいのでしょうか。また、婚外子が相続権を主張するにはどんな手続きが必要なのでしょうか。相続分の規定や死後認知のポイントについて、長年にわたり相続案件を幅広く扱ってきた高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が解説します。

四十九日後、子どもを連れた女性が突然現れ…

Aさんが世田谷区の不動産(2億円)、株式(5000万円)、預貯金(5000万円)を残して亡くなりました。四十九日も過ぎて、Aさんのお子さんであるXさんとY子さんは遺産分割協議を行い、仲よく、2分の1ずつ分けることとしました。

 

すると、Aさんが亡くなったことを知人に聞いたという女性がZちゃんを連れ、線香をあげに来て、Zちゃんは父の子どもだといいます。

 

Zちゃんが本当にAさんの子どもだとしたら、どうなるでしょうか。

 

次の5つの選択肢から選んで答えてください。

 

①ZちゃんがAさんの子どもであるのであればAさんの相続人であり、相続分はXさん、Y子さんと同じで、3分の1となる。

 

②ZちゃんがAさんの子どもであればAさんの相続人だけれども、相続分はXさん、Y子さんの2分の1で、全体の5分の1となる。

 

③ZちゃんはAさんの子どもであっても認知あるいは死後認知を受けなければ相続人とはならない。認知を受けた場合の相続分は3分の1である。

 

④ZちゃんはAさんの子どもであっても認知あるいは死後認知を受けなければ相続人とはならない。認知を受けた場合の相続分は、Xさん、Y子さんの2分の1で、全体の5分の1である。

 

⑤Zちゃんは、認知を受けたとしても、遺産分割協議が終わっているから相続はできない。

 

父親が亡くなったあとに愛人の子が出現するというのはドラマのようですが、現実にないことではありません。現に筆者は、愛人のお子さんから父親と親子であることの確認を求める「認知請求」の依頼を受けたことがあります。依頼を受けてから調査したところ、父親は生きており、話し合いで事件は解決をしました。

 

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

親の死後、認知請求できるのは「3年間のみ」

さて、今回のケースがどうなるか説明していきましょう。

 

まず、婚外子が相続人となるためには、認知を受けている必要があります。婚外子から父親に対してする認知請求は、父親が生きているときにはいつでもできます。

 

しかし、父親が亡くなってしまったときには、死後3年間しかできません。

 

今回のケースでは、Aさんが亡くなって四十九日が過ぎたところなので、まだ3年は経過していません。そこで、まだ認知を受けていないとしてもこれから認知の訴えを起こして認知が認められれば、Aさんの相続人となります。

 

次に、ZちゃんがAさんの相続人だとして、相続分はどうなるでしょうか。この点について、民法では、長いあいだ、婚外子は非嫡出子として、その相続分は嫡出子の2分の1と定められていました。

 

今回のケースでいえば、Xさん、Y子さんとZちゃんは2:1となりますから、XさんとYさんが5分の2、Zちゃんは5分の1となります。しかし、平成25年9月4日の最高裁判決は、非嫡出子と嫡出子の法定相続分が異なることは憲法14条の法の下の平等に反するとして違憲と判断しました。

 

その後、この違憲判決を受けて、民法も改正され、非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1とする条文は削除されました。

 

したがって、Zちゃんは、認知を受けているかこれから認知を受ければ、婚外子であっても相続分は、Xさん、Y子さんと同じとなり、3分の1となります。

 

今回のケースでは、XさんとY子さんとのあいだで遺産分割協議は終わってしまっています。このことがZちゃんの相続に影響はあるでしょうか。

 

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