今の自分は何点か?…「理想の未来」を「逆算」する簡単な方法

高野 貴士
今の自分は何点か?…「理想の未来」を「逆算」する簡単な方法

7年間で約1000人もの起業プロデュースやコーチングを行ってきた株式会社クリエスティヴ代表・高野貴士氏は、「目標達成をするには、妄想や願いではなく、具体的に『どんな自分になりたいのか?』『何が自分の強みなのか?』『どんな未来をつくりたいのか?』など、理想の未来を明確にしていくことが必要」と説いています。本記事では「プライオリティ・バランスシート」を用いて理想の未来を明確化する方法を解説します。

「なんとか次期部長に昇進したいです」とある女性の声

■部長に昇進できれば10点満点のはずが、なぜか不安に

 

「なんとか次期部長に昇進したいです。どうしたらいいでしょうか?」

 

相談に来たF子さんの実例を紹介します。カウンセリングのなかで、F子さんにプライオリティ・バランスシートに臨んでもらい、部長になることであなたのプライオリティ・バランスはどうなりますか?と点数をうかがっていきました。

 

「部長になれば会社への貢献度が高くなりますし、時間にも余裕ができるので家族や子どもと過ごす時間も増え、思い出もたくさんつくれます。豊かになれば両親にもいろいろプレゼントもできます!」

「それはすばらしい未来ですね! ところでF子さん、あなただったらオール10点満点になるはずですが、1個6点の箇所がありますね、健康の部分。これはどうしましたか?」

 

ここで私たちが行動するメカニズムを解説します。私たちが行動する理由というのは、実はたった二つです。「痛みを避けたいのか?」「快楽を得たいのか?」、このどちらかです。「痛みと快楽の法則」とは、フロイトの心理学を活用しています。人間は常に「痛み(苦痛)」を避け、「快楽」を求めるという考え方です。

 

そして重要なのは、快楽を得るための行動よりも痛みを避けたいという行動のほうが、エネルギーがとても強いということです。F子さんは「部長になりたい」という自分の理想(快楽)がイメージできても、もし部長になったら「ストレスで身体を壊してしまうかもしれない」という不安(痛み)が生じている状態でした。

 

この心の状態だと、部長になってしまうと痛みを感じる恐怖が邪魔をして、F子さんはどこかで「部長はなってはいけない」と思っているので、どんなに頑張っても前に進むことができないのです。人間の行動は私たちが思っているほど複雑なものではないといわれていますが、この「心のブレーキ」をはずしていかなければ、行動に移すことができず幸せになるのは難しいでしょう。

 

■コーチングとは前へ進めない人の心のブレーキをはずすこと

 

コーチングは、頑張っている人の背中をさらに頑張れるように押す仕事だと考えている人はとても多いです。確かにそれも重要なのですが、それよりもっと重要なことがあります。

 

コーチングとはその方の恐怖や不安を特定して、結果が得られない要因を探し、例えばその不安や恐怖を取り除いていく技術なのです。

 

プライオリティ・バランスシートでは、理想の未来を描いたとき、「これは自分には無理かもしれない」「そんなことをやったら人になんて言われるか分からないから怖い」というような不安や怖さ(心のブレーキ)を特定することも可能です。そういった意味でもこのシートはとても画期的です。

 

心のブレーキについて、分かりやすく、車にたとえて説明してみます。車の運転では、ブレーキを踏んでいたら、いくらアクセルを踏んでも前へ進みません。自分がこうなりたい!とアクセル全開で進もうとしても、心にブレーキがあると行動ができないのです。人間は実にたくさんのブレーキをもっています。

 

この心のブレーキを知らないと人は「私には才能がない。私は意志が弱い。私は根性が足りない」などと思い込んでしまい、挫けてしまう人も多いのですが、才能がないわけでも、意志が弱いわけでも、根性がないわけでもありません。

 

原因は自分では気づかずに踏んでいる思考のブレーキであることがほとんどで、プロのコーチはこの心のブレーキ、つまり行動できない理由を特定し、この意識を書き換えることで、行動しやすくするのです。あなたがもしこれまで頑張ってきたけれど、なかなか成果が出ないことがあるならば、心のブレーキが原因かもしれません。ブレーキをはずすことで、アクセルが正常に働き、今までよりずっと少ない努力で目標達成ができるようになるのです。

 

 

高野 貴士

株式会社クリエスティヴ 代表取締役

 

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