本連載は、不動産仲介会社の経営に加え、セミナーなども精力的に行っている佐久川靖行氏の最新刊で、2015年8月に刊行された『「出口」から考える賃貸経営の収益改善計画』(カナリアコミュニケーションズ)の中から一部を抜粋し、賃貸経営のためのリフォーム&リノベーションのポイントを紹介します。

何を差別化し、何をデザインするのか?

変化する入居者ニーズに対して、賃貸物件にも「差別化」が必要だということで、設備を新しくしたり、クロスの色を変えたり、オシャレなデザインを入れたリフォームやリノベーションが流行っています。

 

しかし、言葉だけで差別化と言っても、何を差別化するのでしょうか? 「最近の入居者ニーズに合わせたリフォームです」とか「他の物件と差別化したデザインでリフォームします」なんてことを言われるとそれっぽく聞こえてしまいますが、何を差別化して何をデザインするのかが、どこか置いてけぼりにされているケースが増えてきているように思います。

 

例えばわかりやすいところで、「和室は人気がないから洋室にするために床をフローリングにリフォームする」と言葉だけで聞くと正解のように思えるのですが、もし、この物件のお風呂にシャワー設備や給湯設備がなかったらどうでしょうか? 

 

和室をフローリングにするなら、シャワーや給湯設備を導入することが優先事項となります。それをせずにフローリングにしたところで、それは全くの無駄金になってしまう可能性が高くなります。

 

さらには、床だけフローリングに変えて押し入れは以前のままなんて、お金を無駄に使っていることの象徴的なパターンです。文章で改めて言われると当たり前のように感じると思いますが、実際に、そんなお部屋を筆者は何十部屋、何百部屋と見てきました。

リフォームしても「決まらない部屋のまま・・・」の理由

リフォームしたものの空室が埋まることなく無駄金になっている、そんな無駄金リフォーム&リノベーションを、少し具体例も含めてご紹介しましょう。

 

とある家主さんに、「佐久川さーん。今回は150万もかけてリフォームしたから、ぜひ見に来て」と言われたので訪ねてみました。

 

<家主さんが行ったリフォームの概要>

 

費用…150万円 古い2DKを1LDKにリフォーム

(間取りはあくまでイメージとして捉えてくださいね)

 

 

実際に部屋を見に行ってみるとこんな感じで(下記図表1参照)以前よりは、とても良くなっていたのですが、賃貸仲介の営業マンとしては、「家主さん、ごめんなさい。これでは決まりません」というのが本音なのです。

 

(実際に部屋を見に行ってみると・・・新品のキッチン!!お湯が出ない!
(左)実際に部屋を見に行ってみると→(右)新品のキッチン!しかしお湯が出ない・・・

 

実は、リフォームして自信満々でお声掛け頂いても、営業マンとしては、決まらない理由・本音を言いにくいものなのです。

 

例えば写真にもあるように、せっかく新品のキッチンをつけてもお湯が出ないとか、昔の古い砂壁をそのまま新しくしていたりとか、なぜかわかりませんが古い照明をつけていたりなど、家主さんの使ったお金や思いなどが、全く無駄金になってしまっています。

 

 

次回は、そのようなリフォームが無駄金になってしまっている、無駄金リフォーム、無駄金リノベーションの典型例をご紹介していきたいと思います。

本連載は、2015年8月25日刊行の書籍『「出口」から考える賃貸経営の収益改善計画』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「出口」から考える 賃貸経営の収益改善計画

「出口」から考える 賃貸経営の収益改善計画

佐久川 靖行

カナリアコミュニケーションズ

今、お悩みの家主さんへ… 空室に困っていませんか? リフォームするかどうか迷っていませんか? 下がり続ける家賃に困惑していませんか? 人口減少時代、これからますます厳しくなる賃貸経営。しかし、考え方を変えること…

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