医師には金融商品のセールスも押し寄せてくるが・・・
筆者にコンサルティングを依頼される開業医の「決算書」や「資産状況」「事業借入返済予定表」などを見せていただくと、しばしば驚かされることがあります。
「これまで余剰資金をコツコツと貯めてきた」という方でも、よく見るとほとんど銀行預金や郵便貯金に預けてあるだけという場合が多いのです。なかでも目立つのが「保険」の占める割合が多いことです。多額の生命保険に入ったまま何年間も保険料を支払い続けている――そんな開業医も少なくありません。
生命保険は、医療法人であれば節税効果も高く有効な金融商品ですが、過剰に入りすぎているケースが目立ちます。そういった場合、保険外務員の営業トークに押し切られて加入してしまったという人が多いようです。しかし、保険もきちんと選別して入らなければ、資産運用を目的に加入したはずが、いざというときには解約手数料がかさみ、かえって損をしてしまうこともあり得ます。
実際に筆者が見たなかには、法人で最大年間3500万円の保険料を支払っていたケースや、個人で40種類の保険に加入していた方もいました。また、通常ではあり得ない借入金利のまま、長年放置され続けてきたケースも数多く見受けられました。
開業医には、銀行や証券会社、保険会社などの金融機関、あるいは不動産会社の営業マンによる勧誘が数多く押し寄せてきます。本来なら提案する金融商品は、投資家の利益となる商品やサービスでなければなりません。しかし、現実には明らかに投資家のほうが損をする「WIN―LOSE」の可能性が高い。そんな商品や取引に対しても、そのまま言いなりになってしまっている開業医が多くいるのです。
金融機関は自己都合の情報しか流さない!?
アベノミクスの推進によって円安が進み、将来のインフレが懸念されています。今後は、円安でも資産が目減りしないように、一定の割合で海外に資産をシフトする選択肢などが必要となっているのです。
たとえば、リタイア後の人生設計によっては海外に積極的に資産を移したほうがいい場合もありますし、海外移住やロングステイ(ハーフステイ)を考える人は、資産分散という意味も含めて、より積極的に外貨投資などの資産運用を考えるべきです。
しかし、少なくとも筆者がコンサルティングした開業医で言えば、海外に資産を移しているような人はほとんどいませんでした。彼らの多くは超多忙なうえにそうしたノウハウを知らないのです。本来であれば、これらノウハウは付き合いのある金融機関などが指南してくれるはずなのですが、なかなか今の日本の金融機関には存在しません。
たとえば最近、弊社のような創業9年目のベンチャー企業にも、一流の銀行や証券会社、生命保険会社から転職してくる20〜30代前半の若者が数多くいます。面接時に彼らの話を聞いていると、現在の金融機関では競争が激しく、他社商品との価格勝負になったり、会社都合によって、顧客のためになる提案ができなかったりするというのです。
開業医を取り巻く経営環境は現在、そして未来にわたって、厳しいものがあります。診療報酬の改定、競争激化による経営悪化の増加、そして富裕層への課税強化、さらには2025年問題に代表される超高齢化への備え・・・。リタイア後に笑顔で過ごすためには、これまでのようにただ手をこまねいているだけではなく、正しい判断基準を持ち、開業医自らがしっかり時間を作って資産形成しなければならない、そんな時代が来たと考えるべきです。