医療形態は「待つ医療」から「在宅医療」へシフト
外へ出る医療のニーズは政府による「在宅医療」の推進にも後押しされています。現在、政府は高齢者の増加に伴い「施設から在宅へ」という在宅医療・介護の推進を打ち出しており、自宅で療養し、最期を迎えることができる体制作りを進めています。これらは「地域包括ケアシステム」と呼ばれており、地域と医療、介護サービスなどが相互的に働き、高齢者や患者さんの暮らしをサポートしていく仕組み作りが始まっています。
政府の報告によると、2025年度の全国の病院ベッド数(病床)は約115万〜119万床になると見込まれています。2013年時点よりも、16〜20万床削減されており、約30万人の患者を、介護施設や高齢者住宅に移し在宅医療を受けられるようにすることで、病床の減少と医療費の削減につながるという考え方がうかがえます。
これにより、医療の形態が大きく変化し、「待つ医療」を続ける医院は少数派となり、積極的に外部に出て予防医療や在宅医療を中心にやっていく医師や薬剤師が多数派になる。そんな未来を予想する専門家も少なくありません。
たとえば団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」などはその典型的なものと言えます。
約700万人とも言われる団塊の世代は、これまでにも消費文化や流行などを左右する戦後の象徴的な世代と言われ、日本全体に多大な影響を与えてきました。医療の世界では、全員が65歳の前期高齢者となる2015年がひとつの区切りと言われ、いわゆる「2015年問題」として注目を集めました。そして、この団塊の世代が自己負担額の少ない後期高齢者となる2025年に再び大きな転機を迎えるのです。
開業医を続けるにも限界がある!?
予防医療への特化、そして在宅医療中心の医療スタイルと、今後、日本の医療制度は大きな方向転換を余儀なくされます。それは当然、開業医自身の人生にも大きく関わってきます。開業医として医院経営を成功させることも重要ですが、同時に個人の人生設計についても、早急な対策が求められているのです。
開業医は何歳になっても続けられると思われがちですが、実際には高齢で現場に立つというのは難しい場合があります。たとえば歯科医の場合、医師としての技術力のピークは50代半ばまでと言われています。細かな作業を強いられ、視力なども必要とされる仕事であるために、視力や手先の器用さが維持できる50代半ばまでがひとつの区切りだとされているのです。そうなると、自分の歯科医としての「リタイアの時期=ゴール」を早めに想定する必要が出てきます。
理想の暮らしを得るために「資産形成」の意識を・・・
開業医を辞めて引退してしまうのか、あるいは大学などに戻って講師として若手の育成に転向するのか。ゴールはその人の価値観などに大きく左右されますが、少なくともどんな「未来」を描くのかによって、その人の人生設計は大きく変わってきます。また、子供がいる場合は、医院を承継させるのか、そしてそのための学資はどうするのかといった問題も出てきます。
医院の経営状況や収入、支出、納税額などをトータルでシミュレーションして、現在の生活水準を維持したままの豊かな老後生活を送る――そのためにはどうすればいいのかが問われるのです。
しかし実際、開業医の時間の使い方というのは、「仕事80、家庭15、自分5」という割合ではないでしょうか。医療の現場では相変わらず長時間労働を強いられ、1日10時間以上という人も少なくありません。仕事に1日の大半の時間を割かれており、自分自身の人生設計をじっくり考えて、将来のことを準備する時間もないのが現状です。
ですから、資産のことは税理士任せ、あるいは家族任せなど関心のない人が多くいます。加入している生命保険の内容、事業借入の残高と金利などを伺っても正確に答えられない。あるいは資産形成(運用)に対する意欲はあるものの、優先順位が低く、稼いだお金は銀行の預金に預けたまま・・・そんな状況では、これからの時代、理想の暮らしが送れるとは限らないのです。