「投資は危険」「預金は安心」という日本人の先入観
残念ながら、日本人の多くは投資や資産運用といった事柄に対し、「リスクが高い」という先入観を持っている人が多く、さらには「ギャンブル」のようだと感じている人も少なくありません。
こうした思想が根付いた背景には「学校教育で一切投資教育を行っていない」ことが大きいのではないでしょうか。投資教育が行われていないために、日本人の多くは自分の資産を運用するという発想すら持っていない人が多い傾向にあります。
欧米など先進国では、子供のころから投資教育が熱心で「モノポリー」のようなゲームなどを通じて投資を学ぶと言います。対して日本人は寿命が尽きるまでひたすら「預金」に精を出す人が多く、平均で2000万円を遺してこの世を去るというデータもあります。
その理由のひとつとして、日本の歴史的背景があります。明治に入ると郵便貯金が導入され、政府は太平洋戦争の敗戦処理のために貯蓄を奨励しました。そのため、「貯蓄は美徳」という概念が国民に浸透され、今でも私たちは「貯蓄は良いこと」と漠然と思い込んでいるのではないでしょうか。まさに子供がお年玉を使わないで貯金をしたら、褒められているはずです。
日本銀行調査統計(2015年)の日本と米国、欧州別の「家計の資産構成」のデータによると、日本人の個人資産は約52%が預貯金や現金で、それに対して米国では約13%、欧州では約35%となっています。世界でも有数の超低金利国でありながら、日本国民の大半はリスクをとらずに銀行や郵便局に預けておくのが安心だと考えているのです。
しかし、金利の上昇は見込めず、増税が進む一方の今の時代、定年を迎えてから20年ほど程の暮らしに預貯金を食い潰していくだけで賄っていけるのでしょうか。
引退後、7割の医師が資産形成をしなかったことを後悔
勤務医や開業医を対象としたある調査では「資産運用で重視するのは何か」という問いに対して、開業医の8割以上が、「普通預金や国債等の堅実さ」と答えているというデータがあります。問題はその理由で、「資産運用に興味がない」「現在の収入があれば運用の必要はない」「時間がない」といった意見が多く見られます。
ところが、すでに退職した元医師、元歯科医師を対象に行われた「現役時代にやっておけば良かったと思っていることは何か?」というアンケート結果を見ると、興味深い結果が出ます。年収2000万円以上の開業医に絞った結果は次のようになります。
①退職後の生活に心配しないだけの資産形成・・・73.1%
②余暇を楽しめる趣味を持つこと・・・61.6%
③税制に関する知識の習得・・・54.9%
(複数回答、2014年インベストメントパートナーズ調べ)
医師や歯科医師の7割以上の人が、「リタイア後の生活のためにもっと資産形成をしておけば良かった」と答えています。言い換えれば、現役時代はそれだけ資産形成に無関心だったことになります。
超多忙な日々の医療現場においては、考えなければならないこと、やらなければならないことがありすぎて、一般の人よりもなかなか「お金」や「経営」にまで頭が回らないことでしょう。しかし、そう思っているうちに、リタイア時期を迎え、後悔している医師がこんなにも多くいるのです。