離婚の際夫婦で築いた財産は原則的に折半することになりますが、不動産の場合は現金と異なり、簡単に分けることができません。そのため、売却してお金を分ける、あるいは片方が相手の持分を買い取るのが一般的ですが、ローン残額がある場合は一筋縄ではいきません。また、よく考えずに放棄してしまうと、結果的に損をする場合もあるため注意が必要です。事例をあげながら選択肢を探ります。

ローンを嫌って放棄すると「損をする」場合も

 

元配偶者に「残っているローンの支払いはするから、家の権利を無償で譲ってください」という提案をされたとしましょう。それを受け、「たしかに、これから数十年間ローンに縛られるにはイヤだ」と考えたとして、即時に「では、譲ります」と承諾していいものでしょうか? 答えは「No」です。

 

建物が古いからといって、必ずしもローン残債より安く評価されるとは限りません。鉄道駅や商業施設開業などに起因する周辺環境の魅力向上によって、土地と建物を併せた査定評価が予想以上に高額となる場合もあるのです。

 

「ローン支払いを続けられるかどうか自信がないから、マイホームは相手に譲る」と安易に財産分与の権利を放棄しては、あとで後悔することになりかねません。

 

 こんなケースもある…財産分与で権利を放棄してはいけなかった例

★購入時の価格:5,000万円(住宅ローン利用)

★ローン金利を含めた支払い総額:5,460万円(固定金利0.5%・返済期間35年)

★離婚時のローン残債:2,260万円(ローン返済20年目時点)

★離婚時の査定評価額:3,500万円

 

上記のケースでは、5,000万円で購入したマイホームが、20年後に3,000万円以上の査定評価を得ています。

 

ローンを含めた支払い総額から離婚時(購入から20年後)の残債を引くと、すでに半分以上の支払いを終えている(5,460万円-2,260万円=3,200万円)ことが分かります。加えてローン残債より査定評価額の方が高いので、この段階で売却すれば1,000万円以上の利益が出る(査定評価額3,500万円-残債2,260万円=1,240万円)ことも分かります。

 

立地等によっては、決して珍しい話ではありません。ローンの支払いを嫌って簡単に財産を放棄してしまったら、損することは明らかです。

「査定評価」でマイホームの真価を知る

 

査定評価額がローン残債と権利買い取り額を上回る場合は、売却でプラス資産になる可能性もあります。とはいえ、住み慣れた場所を失うのは不安でしょうし、新たに賃貸住宅を借りるとしても、以前と同じ生活レベルが保てるか分かりません。

 

経済的に余裕があるなら、そのまま住み続けてもいいですが、そうなれば、離婚した相手とともに暮らした家のローンに縛られ続けることになりますし、よくも悪くも思い出深い場所に止まることになりますので、その点は熟考することをお勧めします。

 

住む場所が変わる不安はあっても、心機一転して新たなステップへと進みたいという人は、思い切って「売却」するのも手です。不動産会社に査定評価を依頼し、想定以上の価格が出るようなら強気の価格で売り出して現金化するのです。

 

もちろん、周辺環境や建物の状態によって、希望の結果が出るとは限りませんが、プロの査定結果を精査しながら、買い取るのか売却するのか、後腐れないようにしておくことが大切でしょう。

 

 

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※本記事は、「ライフプランnavi」に掲載されたコラムを転載・再編集したものです。

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