機器を退職金代わりに「現物支給」して節税する方法
最後に少し変わった事例ですが、コインランドリー運営を退職時の現物支給として扱う方法をご紹介します。
コインランドリーの建物工事や機器は、次表のように、時間が経てば減価償却費の計上によって、帳簿上の価額が下がっていきます。
たとえば、コインランドリー機器の法定耐用年数は13年なので、コインランドリー事業を開始してから13年後に会社を勇退するケースを考えてみます。
この場合、退職金としてこのコインランドリーを現物支給で受け取ると、コインランドリー機器は法定耐用年数を経過しているため、簿価は1円。建物の減価償却が一部残っていますが、出資時は簿価3,000万円だったのが簿価311万円になっています。
退職金の代わりに現物支給とした場合は、「退職所得」として所得税等の課税対象になります。退職所得は、所得額から次の退職所得控除額を差し引いて計算します。
◆勤続年数20年以下の場合
退職所得控除額=勤続年数×40万円
◆勤続年数20年超の場合
退職所得控除額=800万円+70万円×(勤続年数-20年)
先ほどの例で、13年経過したコインランドリーを、勤続年数20年で受け取る場合、
退職所得={311万円–(40万円×20年)}×1/2=-244.5万円となります。
退職所得がマイナスになりますので、一切税金はかからないことになります。
これに対し、現金3,000万円を退職金として受け取る場合、課税される額は、
3,000万円–(40万円×20年)=2,200万円となります。
課税される所得の額を2,200万円も減らすことができるため、数百万円の節税になります。しかも、その時のコインランドリーは、実際には簿価311万円以上の価値があります。
なぜなら、洗濯乾燥機や乾燥機は寿命が長いため、十数年経っていたとしても、変わらず稼働して収益を上げ続けるからです。
このように、コインランドリーをご自身の退職金代わりに現物支給として受け取ることで、実質的に所得税の大幅な節税になります。そして、その後の収益を自分のものにすることができるのです。
黒瀧 泰介
税理士法人グランサーズ共同代表 公認会計士・税理士
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