米国企業(S&P500のうち売上が1兆円以上の企業276社)のCEOの報酬の中央値は16.2億円にもおよび、日本の大企業の1.3億円と比較して約12倍の額です。この違いはどこからくるのでしょうか? 今回は、日米企業の「役員報酬」の違いについて見ていきます。※本連載は、菊地正俊氏の著書『No.1ストラテジストが教える 米国株投資の儲け方と発想法』(日本実業出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

米国では「役員報酬」も経営戦略の重要な構成項目

日本企業としては役員報酬が高いソフトバンクグループでも、有価証券報告書で役員報酬については2ぺージしか費やしていません。

 

「ソフトバンクグループの役員報酬制度は、グローバルタレントを惹きつけるに足る市場競争力のある報酬水準になるよう、専門機関による報酬調査結果を参考に妥当性を確認しています」、「取締役の報酬は、取締役会からの信認を受け、代表取締役が報酬調査結果を参照しつつ、各取締役の社会的・相対的地位およびソフトバンクグループへの貢献度等を勘案して、決定しています」との簡単な記述しかありません。

 

一方、JPモルガン・チェースの“Proxy Statement 2020”における役員報酬の記述は37ページにもおよびました。米国では役員報酬が経営戦略の重要な構成項目だと考えられています。経営方針→戦略的フレームワーク→報酬哲学→パフォーマンス評価→報酬決定→報酬ミックスというプロセスがあります。

 

パフォーマンスの評価は、経営委員会が戦略的な優先事項を確立→取締役会が会社全体及び事業部門の戦略と事業計画をレビュー→経営委員会が会社全体、事業部門、個人のパフォーマンスの目標を設定して、

 

取締役会と共有→取締役会が複数年の会社全体および事業部門の戦略的目標に対する予算をレビュー→インベスター・デイで、重要な戦略的イニシアティブと中期的な財務目標を開示→人材コントロール・フォーラムで個人の不正行為の有無、潜在的な重要なリスク&コントロールを議論→経営委員会メンバーの戦略的目標に対するパフォーマンスを評価、というプロセスを経ます。

 

また、優秀なシニア・エグゼクティブを効果的に惹きつけ、適切なモチベーションを与え、キープするために、同業他社の報酬の水準や構成、プラクティスをレビューしています。

 

役員報酬の比較対象とする主要な金融機関はアメリカン・エクスプレス、ゴールドマン・サックス、バンク・オブ・アメリカ、モルガン・スタンレー、シティ・グループ、ウェルス・ファーゴですが、事業会社や海外企業の役員報酬も参照します(【図表2】)。

 

[図表2]JPモルガン・チェースが役員報酬の決定の際に比較対象する企業

 

これらの決定方式に基づいて、ジェームズ・ダイモンCEOの2019年の報酬は基本給が150万ドル、インセンティブ報酬が現金500万ドルとPSU(Performance Stock Units)2500万ドル、合計で3150万ドル(約33億円)でした。

 

菊地正俊

みずほ証券エクイティ調査部 チーフ株式ストラテジスト

 

 

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No.1ストラテジストが教える米国株投資の儲け方と発想法

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